六星文道あらためモンド・ムッボシ
「う、う~ん」
文道は唸り声を上げながら起き上がろうとしたが、起き上がれない。
どういうことだ。
文道はわずかに動かせる手足をバタつかせながら、首を動かし周りを見ようとする。
「おっ、や~っと起きたか」
文道の目の前に作業着のような服を着た、青く短い髪の子供のような、しかし文道よりはるかに大きい少女が文道を覗き込んでいた。
「うわっ!! 」
文道は驚きのあまり、つい大きな声を出してしまう。
「そう、驚くなって」
少女は困ったような顔をする。
「あ、あい」
な、なにと言おうとしたが、言えない。
体も動かない、声もうまく出せない。
どういうことだ……
モンドがそんな事を思っていると
「とりあえず、自己紹介しとくぜ、オレは『神の頭髪』シュヴ・ディユーだぜ」
神の頭髪? なんだコイツ……ヤバイ系の人なのか?
文道がそんなことを考えていると、それを見透かしたように
「おいおい、ヤバイ系ってひどいな~」
と笑いながら答えてきた。
「!! 」
文道は息をのむ
心を読んでる、しかもなんかものすごく失礼な感じの考えを読まれた!
文道は大きな少女であるシュヴを怯えたような目で見つめる。
「そう、ビビんなって、別に怒っちゃいないよ」
そう言って、こちらを安心させるように笑う。
「ういえあんす」
すいませんっす
と言おうとしたが、また言えない
モンドが不思議に思っていると
「ああ、何も言わなくていいから、思うだけでオレにお前の言葉は伝わるぜ」
シュヴは、モンドをジッと見る。
(そうなのか)
モンドがそう念じただけで
「ああ、そうだ」
シュヴは、会話するように言葉を返してきた。
「うえ……あい」
モンドは必死になって、身も悶えさせる。
小さく、ブニブニした芋虫みたいな手がモンドの目に入る。
(ん? あれ? というか~、俺、赤ん坊じゃね、え、え、え、え? な、なんじゃぁこりゃぁあああ~!!? )
そう、文道の体は赤ん坊になっていた。
(え、え、え、え、え?? なにこれ? なにこれ? )
文道はパニック状態になってしまっていた。
「おい、落ち行けって」
シュヴはそう言った。
すると、不思議なことに、文道の精神は落ち着きをとり戻した。
一体、何なんだ。
文道がそう考えていると。
「ま、わかんないことだらけだろうし、好きなだけ質問して構わないぜ」
シュヴはなぜかドヤ顔そんな事を言う。
なんかムカつくやつだな~。
文道が頭の中で話す
(おいおい、ひでぇな~)
とシュヴが返してきた。
(というか、なんで心が読めるの? )
文道がそうシュヴにたいして質問する。
「ああ、オレは神の使者だからな、今だけ限定でお前の心が読めるし、ある程度だが操作もできるんだぜ」
とシュヴが答えた。
(かってに精神操作しないでよ)
文道は不快感を感じそう思うと。
「しかたねーじゃん、お前そうでもしないとまともに話もできねーじゃん」
シュヴは自分を擁護するように、そんな事を言う。
(ま、それもそうだな)
文道はなんとなく納得する。
「それにっさ、今はもう会話も成立するから、読心も精神操作もできなくなっちまったしな」
シュヴはそう言う。
(ふ~ん、というかここどこ? なんで俺が赤ん坊になってんの? )
文道は、そんなもんなのかな、と思いさっきの話題に興味をなくし、次の質問をぶつけた。
「ああ~、まずここはお前の元いた世界とは別の世界『テラテッラ』というところで、お前はいっぺん死んで転生したから、赤ん坊というわけだ」
シュヴはそう答える。
(別の世界! なんでまた)
文道は驚く
すると
「ああ~、まぁ、なんていうかお前って元はこの世界に生まれる予定だったんだよね、でも間違ってあっちの世界に生まれたんだよな~」
シュヴは軽い口調でそう答えた。
(え~、なに間違ってんの)
文道は口を尖らせる。
「まあ、いいじゃんお詫びのしるしにお前には、とてつもないプレゼント、最強レベルの才能がもらえたんだからな」
シュヴがそう言うと文道は
(え! 最強レベルの才能! ラッキー)
喜びをあらわにした。
「ああ、そうだ、これから修行すれば、めきめきと伸びるからな、オレがたっぷりと仕込んでやるぜ! 」
シュヴはガッツポーズをしながら威勢よく言う。
(え~、だる、めんど)
文道という男は努力が大嫌いなため、修行という単語を聞いた、とたん露骨に嫌そうな顔をした。
「え~、だる、めんどって、修行つってもそこまで大変なもんじゃあないぞ」
シュヴは少し呆れたような顔をする。
(いやー、めんどい、修行せずに修行したってことにして最強になれないの? )
そう文道がなまけもの根性を全開な事を思うと
「はぁ!? お前どんだけ無気力(なんだよ! 」
シュヴは呆れを通り越して驚くような声を上げる。
(いやでも、めんどくさいものは、めんどくさいし)
文道の開き直ったような発言に
(は~、しょうがねぇなー)
シュヴはため息まじりに言いながらも、文道の要求に応えることにした。
(やった! )
文道が喜んでいると
「ほい」
シュヴの軽い声とともに、文道の視点はどんどん高くなった。
最終的にシュヴの頭が胸に来るぐらいの背丈の17歳ぐらいの少年になった。
大きくなったはいいが、文道はあるひとつの問題点に気づいてしまう。
「つーか俺、裸じゃん」
文道はそのことにきずくと同時に猛烈な羞恥心におそわれ、顔がりんごのようにまっかになり、慌てて股間を手で隠した。
「ちょ、着るもの、服」
文道が切羽詰まったように言うと
「そんな粗末なもん、見ねーよ」
シュヴが服を投げるように渡してくれた。
「粗末じゃねーし」
文道はそんなことをつぶやきながら服を着る。
村人っぽい服の上に、小汚いローブを着ただけの簡単なものだったが、裸よりは、はるかにマシだな、文道はそんな事を思っていると。
「お前この世界の名前は、なににするんだ? 」
シュヴがそんな事を聞いてきたので
「そうだな~、モンド・ムッボシでいいや」
そう文道いや、モンドが答えると
「ずいぶん、テキトウだな~」
とシュヴに言われたので
「気取った名前より、わかりやすい名前の方が、俺が混乱せずにすむだろ」
とモンドはそんな恥ずかしい言葉をカッコつけながら、そう返した。




