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人間の世界

 十九世紀、初頭。


 それまで悠々と人を拒んでいた広大な海。果てには何があるともしれぬ、いやきっと世界の淵が口を開けて船をのみこむに違いない――といわれていたころ、勇敢な数人の人間がその大自然に挑戦状をたたきつけた。

 彼らは想像を絶する困難を乗り越え、艱難辛苦の末、海の向こうに存在した自分たちとは似ていながらもまったく別種の文化を築いていた人間に出会うことができたのである。


 様々な経験を経たタフな人間たちは、言葉さえ通じない異郷での試行錯誤の末、その地の人間たちとコミュニケーションをとることに成功した。彼らの粘り強さのおかげで人間の『世界』は爆発的に広がり、人々は自分たちとは全く違う文化に触れ、世界はかくも広いものかと感銘を受けた。そして、様々な進歩がここから始まったのである。








 自らの知恵によって自然のヒエラルヒーをひっくり返した知的生命体、人間が爆発的な進歩を始めてから早百余年。


 人の手を必要としない動力はそこらにあふれ、生活は確実に便利になり、海の向こうの世界とまでリアルタイムでつながるほど人の世界は広がった。


 二十世紀、距離を隔てた人間たちは互いのことを尊重し合いながらも、一世紀以上にわたって常識的な付き合いを――。







「……続けてくれれば、『世界は今日も平和です。まる』……で、すんだんだけどなあ……」


 世界を真っ二つに割った戦争がはじまって一年後。


 極東の島国、日本のどこかで「なんでうまくいかないんだろー……? 」と嘆く男がいた。


 黒髪、深緋の瞳。東洋系の顔ににじむ表情はほのぼのとしたものだが、右の目の下に大きく刻まれた一筋の傷のせいか、鋭利な気配が相対したものを一瞬すくませる。

 彼の男の名は、高麗晶樹(こうらい・まさき)。


 彼は、地球の中にひっそりと存在する人類以外の知的生命体。「魔法族」の一員だった。



2015/02/10

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