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01

その瞬間、目が痛くなるほどの眩い光につつまれ、目を開けると神殿みたいなところにいた。


「聖女様…!」


誰かがそう呟いたと同時に歓喜の声で溢れかえった。しかし、その喜びもつかの間。神殿の中の皆が私を、驚き、失望、非難の目で私を見る。


「聖女様を導く事が出来たが…片方は黒髪…!」

「なんてことだ!!」


そうそう、もう1人私の隣にいるのだ。彼女の名前は二條(にじょう)クレア。私の同級生で大親友。イギリス人の母と日本人の父を持つハーフのものすごい美少女だ。彼女は母親譲りのとても綺麗な金髪なのでこの黒髪とは私の事を言っているのだろう。


「クレアちゃん、ここどこだろ?」

「わかりません…。私怖い…」


クレアちゃんが今にも泣きそうな顔になりながら震えだす。

こんちくしょー。クレアちゃん可愛いな!今すぐに抱きしめて安心させてあげたいよ!

しかし、私も内心少し怖くて動ける感じではない。

どうしよう、どうしようと心の中で会議を続けていると神官らしき人がこちらに歩んできて、クレアちゃんに手を差し伸べた。…私の事は見向きもせずに。


「聖女様を直ちにお部屋に連れて行きなさい。黒髪は地下牢へ」


そしてこちらに助けを求める目をしたクレアちゃんの手を無理やりとり彼女をメイドさんと騎士さん達に引き渡し、私を蔑むような冷たい視線で見下ろし、神官さんもその後に続いて行った。

私は、強面の騎士さんたちに立てと言われ腰が抜けて立てないと言ったら、捕らえられた宇宙人のように両腕を掴まれ引きずられるように地下牢へ連れていかれた。






「ちょっと!そこのあんた!クレアちゃんは無事なんでしょうね!?てゆうか私をここから出しなさいよ!!」


どんなに叫んでも暴言をはいても暴れても牢の見張りは知らん顔。私の事を視界に入れたくないという感じだ。

私何かしたっけ?そういえばさっき黒髪がどうたらこうたらいってたよね?


「うるさい。黙りなさい」


そういって私の入れられている牢の前にやってきたのはさっきの神官だった。性格は悪いな。認めたくないけどクレアちゃんと同じくらい美形だ。


「お兄さんせっかく綺麗な顔してるんだからそんな眉間にしわよせてると台無しですよ?

「口を慎みなさい」


そしてもっと眉間にしわをよせる神官さん。


「何ですか?ここから出してくれるんですか?」

「聖女様がなかなか泣きやんでくれなくてな、どうしたら泣きやんでくれるかと聞いたところお前をつれてきてくれたらといったから仕方なくだ」


牢屋は開けてくれたが、縄で腕を後ろでしばられる。


「ねえねえ、なんで私こんなに扱いひどいんですかー?」

「…」


無言で早足で歩いていく神官さん。私と神官さんの周りには私が逃げないようにかたくさんの強そうな騎士さんたちがたくさんいる。

時々、この長い廊下でたまに人とすれ違うが、男の方には敵意のある視線で睨まれ、女の方には小さく悲鳴をあげて逃げて行く。



謎だ。






「ユリ…!」

「クレアちゃん!大丈夫だった!?なんか変な事されてない!?」


部屋に入って私の事を見つけるとすぐに駆け寄り抱きついてきたクレアちゃん。私も抱きしめ返したいけど腕がしばられていてできない。

ちなみにユリとは私の事だ。

クレアちゃんが私が縛られている事に気づいたみたいで、鬼のような顔になって怒った。


「…っ!?あなたたち!ユリを縛るなんてどういうこと!?はやく解きなさい!」


…流石生徒会長。威厳があります。周りの人達は、でもでもという感じだったが、クレアちゃんが今までにだしたことのないような低い声で「はやくしなさい」というと、いそいそと縄をほどき始めた。

縄から解放され、手首を見ると少し赤くなっていた。あんちくしょーきつく縛りやがって。


「ユリ大丈夫?手首赤くなってるよ…」

「大丈夫だよ。ちょっと痛かっただけだから」


泣いていたクレアちゃんは泣きやんで少し落ち着きを取り戻したようだ。

しだいに彼女は自分が何をすべきか目的を持ったようで、全校生徒に向かって話す時のような威厳をもった堂々とした顔つきにかわった。


「ここの責任者の方はどなたですか?」

「私だ」


神官さんの隣にいる爽やかな青年が名乗り出た。


「ここはどこであなた達は誰なんですか?それと何故私達をここに連れてきたのですか?」


クレアちゃんが私も聞きたかったことを質問する。

彼の話は長かったから簡単に説明すると、

ここは私達の世界とは違う世界。いわゆる異世界というところで今いる場所はヘルシュタという国の神殿らしい。彼らはこの国ヘルシュタのお偉いさん達らしく、さっきの爽やかな青年が勇者のアドルフさん。神官らしいと思っていた人は実は宰相でヘルヴァーユというらしい。

そして私達をここに連れてきた目的は、魔王を倒してほしいとのことだ。これを聞いた時は笑いがこらえれなくて盛大にふいてしまった。だってこんな魔王を倒して!なんてファンタジー本や漫画の中だけだと思ったのに実際自分がその助ける立場に置かれると笑えて笑えて仕方が無い。…これは失敬。この国の人は真剣に考えてるんですよね!

この国の文献によれば、勇者が導いた2人の聖女様が勇者を魔王の元へ導き彼らが魔王を倒す。と書いてあるらしい。


「私達が魔王を倒す?ふざけるんじゃないわよ!私はやらないわよ!知らない所へ連れてこられて魔王を倒せって?そんなの勇者1人でやれよ!この国のことで私達を巻きこまないで!」

「ユリ!落ち着いて!…私達は帰る方法がわからないんだし、大人しく従うふりをして帰る方法を調べましょ」


後半の言葉は私だけに聞こえるように小さな声で言った。

そうだ…落ち着こう…ヒーヒーフー…。


「取り乱してごめんなさい。もう一つ質問が。何故私と彼女とでは扱いが全然違うのですか?黒髪がなにか関係があるんですか?」


言葉にするだけでも忌々しいと誰かが呟いた。

あ、聞いたらいけない系だった?




そして私達は王宮に連れていかれ、クレアちゃんは王宮の本館みたいなところ。私は王宮の外れの高い塔に連れていかれた。

また地下牢だと思ったけど違うんだ。聖女様を牢に入れるのは体裁が悪いからだろうか?まあ、どっちにしろクレアちゃんと一日に必ず一回は面会する時間を貰えたし人間関係が苦手な私にとっては人から離されて少しほっとした。


こうして私の幽閉生活が始まった。


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