あとがき
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
「BARクロノ・ロード」は、
“あなたの今の時間に合う一杯を出す”
という、とても単純なコンセプトから始まりました。
喫茶店の物語が「日中の時間をやさしく整える」なら、
バーの物語は「夜の時間に、輪郭と余韻を残す」。
そう考えたとき、同じ“時間”を扱いながらも、
まったく別の味の連作にできる気がしました。
今回はお酒の描写を、できるだけリアル寄りにしています。
氷の大きさ、混ぜる長さ、香りを足す順番。
その小さな違いが、飲む人の夜の速度を変える――
バーテンダーの仕事って、そういうsenかなと思ったからです。
(もし詳しい方が読んだら、優しく見守っていただけると助かります。)
そして、プロローグの「本日のカクテル」に書かれていないもの。
最終話でだけ登場する“零杯目”は、
この店の裏メニューであると同時に、
読者の方にそっと渡したかった合図でもあります。
区切りをつけること。
手放すこと。
越えないこと。
やり直すこと。
どれも、派手な決意ではなく、
ほんの少しの静けさや、ほんの一行の予定でできるかもしれない。
そういう“夜の選択”を、十一杯に詰めました。
もし、この中にお気に入りの一杯が見つかったなら、
それはきっと、あなたの時間に合っていたということです。
感想やレビューで「何杯目が好きでした」と教えていただけたら、
作者としてとても嬉しいです。
最後に。
日中は、姉妹店で喫茶が開いています。
もしよければ、昼と夜、どちらの時間にも寄り道してみてください。
ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
あなたの今夜と、明日の時間が、
すこしだけ飲みやすいものになりますように。




