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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

TSカリスマ美少女ぴゅあぴゅあアイドル

TSカリスマ美少女ぴゅあぴゅあアイドル、可愛い後輩(女)にいろんなものを奪われる

作者: 冬眠

TSカリスマ美少女ぴゅあぴゅあアイドル、第三弾。

彼女が奪われたものとは……


 アタシたち《Colors》は、結構仲がいい方だと思う。

 いまは忙しくてぐっと機会は減ったけれど、プライベートでもよく会って遊びに行ったりお茶したり。楽屋やレッスン中もよくおしゃべりをしている。キャラクターはみんな違うけど、ある意味それがいいのかも知れない。

 でも最初は、全然かみ合ってなくて大変だった。


 真面目でおしとやかだけど、あまりしゃべるのが得意じゃないアオイ。

 気遣い屋で三つも年上な故に、ついついお姉さんぶって距離が出来ちゃうスミレセンパイ。

 逆に三つも年下な上に、人見知りでおどおどしてて引っ込み思案なヒナ。

 そして、明るいギャルだけど前世病弱の少年だったアタシ、キララ。 


 もし同じクラスなら、絶対バラバラのグループに所属しているメンバーである。会ってすぐに仲良く出来るわけがない。

 実際のストーリーでは、ここをなんとかするのがプロデューサーなのだが、案の定こういう面ではポンコツなのである。「仲良くやりましょう」で仲良く出来れば、苦労しねーのである。

 結果、アタシはちょー頑張った。ホントに頑張った。

 もともとのキララであればそこまで苦労はしなかっただろう。だけど今のアタシは前世の「ボク」の記憶がある。「ボク」はずっと病院でひとりぼっちだった。コミュニケーションが得意なわけがない。しかも男である。女の子に……それもこんなとびきり可愛い女の子たちにドキドキしないわけがない。

 それに蓋をして本来の「キララ」でいることは、結構努力が必要なのだ。

 幼馴染みのアオイを引っ張り。距離が出来がちなスミレセンパイに全力で突貫し。おどおどするヒナを思いっきり撫でくり回して可愛がりまくった。

 つまり! こんなに仲良くなれたのは、アタシのおかげと言っても過言ではないのだ! 褒めてもいいよ。というか褒めろ。毎日帰ったら、ぐったりだったんだぞ。

 でもこうした努力もきっと、アタシたちがトップアイドルになれた理由の一つと思えば、頑張った甲斐もあるってモノだ!



@@@

 


「キララお姉ちゃん、いらっしゃいっ!!」

 都心のタワーマンション。下層と比べ明らかに部屋数が少ない高層40階。その一室の玄関扉が開くと同時に、一人の少女が抱きついてきた。それを抱き留め、優しく撫でる。

「おっと。元気いっぱいだねーヒナヒナ」

 西園寺ヒナ。《Colors》最年少の中学一年生。

 何事にもひたむきでまっすぐで頑張り屋。人見知りで引っ込み思案だが、一度心を許すとトコトン甘えん坊になり、親愛表現がとにかく可愛らしくいじらしい。

 ゲームでは「妹枠」なんて呼ばれていて、多くのファンからお兄ちゃん、お姉ちゃんと呼ばれたい、と言わしめた。思わず守ってあげたくなる系アイドルである。 

 色々あった結果、現在間違いなくヒナの好感度を一番稼いだアタシは、ありがたくもヒナの「お姉ちゃん」に就任したのだ。……うれしいんだけど、だいぶ照れる。

「いらっしゃい、キララちゃん」

「今日はお世話になります、メグミさん!」

「ええ、ゆっくりしていってね」

 ヒナの後ろに立つ、妙齢の女性。スッとした立ち姿と凜とした姿に、優しくも芯の強さを感じる。でも笑うとよく似ているのだ。娘のヒナと。

「さあ、お姉ちゃん! 入って入って!」

 今日はヒナのお家でお泊まり会。ずっと前から誘ってもらっていて、でもなかなか予定が合わなかったのだけれど、今日ようやく実現することができた。

 お泊まり会————というか、誰かとこうして遊ぶことじたい、実は前世含めてほとんど経験がない。「ボク」の記憶を思い出してからであれば、初めてだ。理想のキララになるために必死で。アイドルになってからは、仕事と学校と家とで、なかなか忙しかったから。

 何を持って行けばいいのか。あいさつはどうしようとか。もう色々考えて調べたりして、準備に丸一日かかってしまった。今だって内心ドキドキである。

 でも、たかがお泊まり会ごときでドキドキするなんて、カリスマギャルのキララらしくない。

 ここはしっかり、慣れた風を装わねば。何せアタシは、「お姉ちゃん」なのだから!


「うわぁああ! すっごい景色!! めっちゃきれー!!」


「え、これ食べていいの! ホントに? 置物じゃないの? ————って、うまっ!? これうまっ!?」


「ええっ! ここでカミナリとか、ウソでしょ————っ!? ぎゃー落っこちたー! もっかい。もっかいやろっ! こんなのおかしい! 次は絶対負けないんだからっ!!」


「なにこれ。めっかわっ!! 服いっぱい!! うわぁああ、素敵。……え? き、着ていいの? ホントに? マジで? ……えらべにゃい……」


「ちょっ、だめ!! お風呂だめ!! 一緒に入るのだけはだめ!! なんでって……死ぬから!! あたし、死んじゃうから!!! だからだめ——————!!!!」


「なにこのベッド! でっか! ふっかふか! めっちゃきもち————! あ、今度はなにする? トランプ? UNO? それともジェンガ? アタシ、他にも持ってきてるんだよ!!」


 ——クスクス。

 一緒にベッドに転がりながら、ヒナヒナが上品に、楽しそうに笑った。

「ん? どったの?」

「いえ、なんというか……キララお姉ちゃんが、とっても可愛くて」


 ————はっ!!??


 し、しまった! すっかり完全無欠に楽しみまくってしまった! ヒナよりも明らかにテンションが高かった気がする!

 顔が熱い。めっちゃはずい。

「そ、それはほら! 楽しむときは全力で楽しむのが、むしろ大人って言うか」

「ふふ、なるほど。さすがお姉ちゃんですね。勉強になります」


 く、くそう。なんだその慈しむような目は。幼子を見る目は。

 こちとら前世含めたら、倍は生きているんだぞ! というか、そもそも年上だぞ! もっと敬うところだぞ!

 だって、しょうがないじゃないか。友達とお泊まり会がこんなにも楽しいなんて知らなかったし。それに最近は、ヒナの側くらいしか安全地帯がなくて……。アオイやスミレセンパイの近くにいると、色々と思いだすし。隙あらば迫ってくるし。抱きついてきたり。チューしようとしたり。心が安まらなくて……ああ、だめ。今のなし! 思い出すのなし! なしったらなし————————ひゃぁあああ!!

「お姉ちゃん? どうしたんですか、お顔が真っ赤ですよ?」


 ————はっ!!??


「な、なんでもないよ……と、ところでヒトミさん、大丈夫かな? 夜から仕事なんて……」

 こうなったら話題を変えるしかない!

「急な呼び出しだったみたいですからね。もしかすると、今日中には帰ってこれないかも」

 時々はこういうことがあるらしい。でも以前よりはずっと父も母も、家にいる時間が増えたようだ。ヒナの顔は明るい。この顔を見るだけでも、あのとき頑張って良かったって思える。

「そうだ。遊ぶ前にひとつ、お願いがあるんです。……これに、ハンコを押していただけませんか?」

「え、ハンコ?}

 渡されたそれを広げてみる。A3サイズの紙だった。書かれた内容に、けれど理解が出来ずに首をかしげる。

 ん?

 パチパチと目を開け閉めして。

 ……んん?

 目をこすってみて。

 ……………………んんんんん?

 疲れているのかな。何度見ても————

「————婚姻……届け?」

 かわいらしい少女はもじもじしながら。

「私……キララお姉ちゃんと、本当に、ずっと一緒にいたいなって思ってて。だから————」

 そっと追加で手渡されたモノは————ハンコ。しかも……瀬名? あれ、アタシのハンコ? 何で持ってるの?

「アタシと、結婚してください!」







「ほえ?」







「けっこん?」







「ほわぁあああああああああああああああああああああ!!!!??!?!?!??」







 まてまてまって。なんでどうしてふぁああぁあああああああああ!?!?!?


「ヒヒヒヒヒナしゃん! ここここんなじょーだんは」

「私、キララお姉ちゃんのこと、好きなんです! 大好きなんです!!」

「しょしょしょしょしょれは、ボボボボボクもしゅしゅしゅしゅきだけど……」

「友達の好きじゃないんです。もっともっと、一生一緒にいたいくらいの好きなんです!!」

「にゃ、にゃんだって——っ!!?」

 え、まって。なにこれ? ぷろぽーず? ぷろぽーずされてるのボク?

「キララお姉ちゃんは、私を何度も助けてくれました。入ったばかりのアイドル事務所で、不安でいっぱいだった私の手を握って、引っ張ってくれました」

 そ、それは。ヒナが引っ込み思案なことは知ってたから、ほっとけなかっただけで……

「失敗したり、怒られたりして落ち込んだときは、いっつも側にいてくれました」

 た、ただ側にいただけ! それだけ! 特別なにかしてあげたりしてないし……

「何より、おうちのことでも……」

 だって、それは……なにもしなかったら、ヒナは本当にアイドルをやめていたかも知れなかったから。


 ヒナはずっとひとりぼっちだった。

 お父さんとお母さんはとても忙しく、ほとんど家にはいなかった。誕生日もクリスマスも、いつも一人。心の中はいつも寂しい思いをしていた。

 ヒナは思った。両親は、自分に興味がないと。それでもなんとか振り向いてほしくて、たどり着いた先がアイドルだった。

 けれどヒナの両親は、アイドルをやめさせようとした。未成年なのだ。親の許可がいるのは当然だ。その親に反対されたら、アイドルなんてできる訳がない。

 それを防いだのが、アタシなのだ。……本当はプロデューサーの役目のはずなのだが、当然このときもポンコツだったのだ。じゃあ仕方がないですね、じゃねーんですよ!

「私の気持ちをわかってくれて。私のために駆けつけてくれて。私の代わりに、泣いてくれて。「アタシは絶対、ヒナヒナの味方だから」その言葉で、わ、私の背中を押してくれて……」

 ヒナの両親は、実はヒナのことをちゃんと愛していた。それどころか溺愛していた。

 でも、甘やかすのは良くないと、歯を食いしばって我慢して————歯を食いしばりすぎてしまい、突き放す形となってしまっただけだった。

「今の私があるのは、間違いなく、キララお姉ちゃんのおかげなんです」

 ストーリーを知ってたから不安はなかったが、それにしたってひどいすれ違い過ぎて。腹が立って。その……だいぶ感情はいっちゃって。最後はアタシも半泣きしてて……はい。結局やりきりました。全力でやりきりました。ごめんなさい。


「だから、私は。西園寺ヒナは、瀬名キララお姉ちゃんが大好きなんです」


 その潤んだ瞳に。赤みがかったその表情に。震える指先に。本気なんだと、そう感じた。

 まいった。ボクなんかより、よっぽどヒナは大人だ。自分の気持ちに向き合って、しっかり自分の中の答えを出したのだ。……ボクとは違って。

 何か、言わなければ。こんなに本気で、ボクに想いを伝えてくれたヒナに、なにか。

「————っ!」

 けれど。まるで声の出し方を忘れてしまったみたい。声が出ない。かすれた空気がむなしくのどを通るのみ。

 情けない。ボクは。こんなに本気の相手に。他の二人と同じように、何も……


 自分の不甲斐なさに。情けなさに。思わず涙がこぼれそうになる。

 そのとき、ふっとヒナの表情が緩んだ。

「わかってます。急に言われたって、困っちゃいますよね。私のこと、これまで妹としてしか見てなかったのに……。だから————」

 そして、挑戦的に。不適に。少し、笑みさえ浮かべて。

 いままで見たことがないほど。大人な顔をしたヒナがいた。

「だから、これから好きになってもらえるように頑張りますっ!」


 ——ああ、そうだ。そうだった。

 どんなに苦しくても。辛くても。それでも、負けないと。折れないと。口元に笑みを浮かべて、挑んでいくんだ。

 だから憧れたんだ。だから、ボクは心の底から応援したんだ。推しになったのだ。

 この強くてまぶしい、アイドルたちを。

 

「……お手柔らかにね」

「はいっ!!」


 かしゃん。


「かしゃん?」

 あれ、最近聞いた覚えのある音が————て、なんかごっつい手錠されてる————!?

「あ、あの、ヒナさん? こ、これはいったい……」

「すみません、まずは知ってもらうことが大事だから、ちょっと強引にいった方がいいと————パパが」

「パパっ!?」

「キララお姉ちゃんはきっと経験ほーふだから、生半可なアプローチじゃたりないだろうって。だから満足してもらえるように、いっぱい勉強した方がいいって————ママが」

「ママまでっ!? え、ふ、ふたりともヒナヒナの気持ち、知っているの!?」

「? はい。もちろん。早く結婚するためには、親の承認が必要ですので」

「そこっ!? 問題そこっ!!??」

 普通、恋愛がらみを親に相談するの、ハードル高くないっ!? しかもわかってるっ!? 女の子同士なんですよ!? なかなかマイノリティーなんだよ!?

「そしたら応援してくれました」

「応援してくれちゃったの!?」

 理解力化け物かよ!? 意思疎通すらろくに出来てなかったのに、進歩がぶっ飛びすぎじゃないっ!?

 ふと、優しげに微笑むメグミさんのことを思い出した。


 ————あの子が望んだことは、何だって叶えてあげたいんです。


「限度ってものがあるでしょぉおおおおおおお!!!!」


 まって。まって。ちょーまって。

 情報量が多すぎる。突っ込みどころも多すぎる。急展開に全くついて行けないし、全くついて行きたくないっ!!

「よいしょっ」

 ……ついて行きたくないのに、状況が許してくれない。ヒナヒナが持ってきたモノが視界に入り————思考が凍り付く。

「な……なに……それ?」

 なんか、うにょうにょ動いてませんか……? ひぇっ、なんかブルブル震えているのもいません……?

「あ、これですか? とっても気持ちいいらしいですよ。大丈夫です。使い方、いっぱい勉強したんで」

 ああ、まって。本当にまって。よく知らないけど。多分それ、とんでもなく、えっちなやつじゃない? きっとモザイクかけないといけないやつじゃない? 絶対、初っぱなからつかっていいモノじゃ、ないんじゃない?

「本当は道具に頼るのはどうかなって思うんですけど。一番大切なのは、キララお姉ちゃんに満足してもらえることだって、パパとママが」


 ————パパとママよ。生きて帰れたら、絶対しばく。


「お、お手柔らかにって、ボクさっき言った!!」

「はい。きっとこんな程度で、キララお姉ちゃんを満足させることはむずかしいとは思いますが」

 とんでもない! オーバーキルにもほどがありますッ!!

 もうこうなったら手段を選んでいられない。年上の見栄も、キララとしての矜持も全部捨ててでも、この状況から脱しないと!!

「ま、まってヒナヒナ! ボ、ボク、本当は————」

「そういえばキララお姉ちゃん。自分のことを「ボク」って言うときがあるんですね。 ……なんだか可愛いですね! 今日は可愛いお姉ちゃんがいっぱい知れてうれしいです!」

 可愛いのはヒナヒナの笑顔だよ。だけどその手に握ったモノが、あまりにも凶悪すぎてエロすぎて。あまりの温度差に情緒がぶっ壊れそう。

「それじゃあ、頑張りますね!」

「ま、まってまってまってまって!! ホ、ホントはボク、ほとんど経験なんてな————————————————————ひょぇえええええええええええええッッッッッッッ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ぅにゃぁっ」



【正解】

・ハンコ

・婚姻届け(記入済み)

・初めてのお泊り♡

・初めてのプロポーズ

・初めての大人のおもちゃと秘密の一晩♡

・尊厳

・姉としての威厳

・大人ぶった見栄

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