表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

*承・続*


「ごめんなさい」


 と、結城ゆうきは謝った。

 だけど凹んだのは謝られた方だった。

「おかえり」

「ん。ただいま」

 立ち尽くす相手をそのままに、オレのところに帰ってきた結城。

 そして足並み揃えて、オレたちは体育館裏を後にした。

「つーかさ、告白が体育館裏ってベタ過ぎね?」

 体育館から十分離れ、校門近くまで歩いてきたところで、オレはそう笑った。

「こら、笑わないの。あの人だって真剣だったんだよ」

 まったくもう、とこめかみを押さえる結城。

「まぁ確かに、目は真剣過ぎて怖いくらいだったな」

 まるで何かに取り憑かれているかのように。

「うーん……でも私、あの人と面識ないんだよね。学年だって一つ上の先輩だし。なんで突然告白されたんだろ?」

 今度はこめかみをトントンとリズミカルに叩きながら、疑問を口にした。

「アレじゃねぇの? 一目惚れってヤツ」

「まっさかー。私みたいな地味キャラに?」

 ないないない、と笑いながら結城は少し大袈裟に手を横に振る。

 ……地味キャラって自覚あったんだ。

 つーか、いまどきこれほどの優等生ルックスなヤツはいないから、逆に目立つけど。

 まぁ、変わらず着けている桜の髪留めは別として。

「でもさ、まさか本当にまた智流さとるくんと同じクラスになるなんてね。朝言ってた通りになったね」

「あぁ、そのせいで遅刻しちまったけどな」

 苦い顔をして、オレは言葉に少し嫌みを込める。

「それは私だって同じだよ。せっかく無遅刻無欠席で来てたのに……築き上げてきた優等生キャラが台無しだよ」

 ……あ、そっちも自覚あったんだ。

「つーか、結城も遅刻したのに、なんでオレだけ罰当番なわけ?」

「それは智流くんが遅刻常習犯だからでしょ。しかも担任の先生が魚住(うおずみ)先生だし」

「あー、なんで一年に引き続き魚住さんなんだよ。オレ、あの人苦手なんだよなー」

「え? そうなの? 魚住先生、カッコイイしフレンドリーだから人気だよ?」

「いや、まぁ、カッコイイのはイイんだけど、フレンドリー過ぎるのが苦手なんだよ」

「ふーん、そうなんだ」

 そう納得してから、少し間を開けて、

「――じゃあ、私もフレンドリー過ぎ?」

 と、結城が訊いてきた。

「は? 何それ? オレたち幼なじみじゃん。フレンドっつーかファミリーみたいなもんじゃん」

「そう……だよね。何それ、だよね。意味分かんない質問だよね。反省会もんだね。今の私はないわー」

 ないないない、と笑いながら結城は少し大袈裟に手を横に振る。

 ちょうどそのとき、オレたちは校門を過ぎた。

 そして、そこでオレは立ち止まった。

「あ、オレちょっと寄り道して帰るから、こっちの道行くわ」

「え? そうなの? あっ、もしかして、またゲーセン?」

 おばさんに言い付けちゃうぞー、と同じく立ち止まった結城が意地悪そうな笑みを浮かべる。

「そんなんじゃねぇって。これから人と会う約束してんだよ」

「へー、珍しい。約束は平気で破る主義の智流くんが」

「……一体、お前はオレをどんなキャラに仕立てようとしてんだよ」

「んー、不良系オレ様キャラ? だって現に今、金髪でサングラスにピアスまでして、さらには全身ヒョウ柄の――」

「してねぇよ! 小説じゃ分かんないけど、超普通の学ランを着た超普通の高校生だよ!」

 つーか、オレにヒョウ柄の何を着せようとしたんだよ。

 ……てか、流れで自分のこと超普通とか言っちゃったけど、もう完全に普通じゃないんだよな、オレ。

 ま、目の前にいる結城は何も知らないけど。

 知らなくてイイし、知らない方がイイし。

「んじゃ、きちんと約束果たしてくるわ」

「了解。あんまり遅くなっちゃダメだよ」

「ウチの親みたいなセリフだな、それ」

「そりゃそうだよ。私は智流くんのファミリーみたいな存在なんだから」

 お母さんの言うことは絶対なんだから、とオレに指差す結城。

 ……うわぁ、ホントの母さんより厳しい。

 ウチって基本、放任主義だから。

 ま、補足説明だけど。

「んじゃ、また明日な」

「うん、また明日ね」

 そうして、オレたちは校門前で別れた。


 ――こうして、オレは“原因”の一日を終えた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ