話の出所
「なぁ、知ってる?」
噂話なんてものは大概がこんな始まり方をする。にやにやと、したり顔で、あたかも自分だけが知り得たスクープだと言わんばかりに。その話の出所が何処かも知らずに。
「いや、実はさ……」
どこにでも転がっていそうな噂話は隣のクラスで盛り上がっていたらしい。
「ああ、それなら俺も聞いた事あるわ。あれだろ?」
「それってプールだろ?」
「体育館じゃねぇの?」
「国旗掲揚台の下に埋ってんだろ?」
学校の怪談、そんなものは根も葉もなければ根拠もない。こうやって、その場の流れで面白がって尾鰭が付くものなのだ。只、火のないところに煙は立たない。
「で、コレ聞いたら75日以内に誰かに話さないと」
「呪われるんだろ?」
「全ての霊に取り憑かれて」
「漏れなく話さないと漏れた霊に」
人の噂も七十五日、消え入る前に話せばいい。
「マジだったら恐ぇな!」「ヤバくね!」
「お前試しに誰にも喋んなよ!」「ふざけんなよ!」
長い学校の歴史の中で不幸は一回、僕はこの教室で死んだ。
「なんか最近、あいつ変わったよな?」
「マジで呪われたんじやね?」
「え?あの話、なんか抜けてんの?」
その話の出所が何処かも知らずに……