story257 「授業参観」
「お母さんが来てくれる予定なんだけど、お父さんは仕事で、忙しいからお母さんだけなんだ… 」
「うちも奈由ちゃんと同じで、お母さんは来てくれるって言ってたけど、お父さんは来れないって言ってたよ」
「そうなんだ。由紀ちゃんも、わたしと同じなんだね」
「お父さんは、毎日私たちのために働いてくれるから来れないのは仕方ないよ」
「確かにそうだね」
すると学校のチャイムが鳴って大川先生が教室の中に入ってきてみんなに話しかける。
「みんな全員席についたかな?今から算数の授業をしますが、今日は授業参観です!今からみんなのお母さん、お父さんたちが、教室に入ってきますので授業を始める前に入ってきてもらいたいと思います」
この時僕と羽衣ちゃんは、既に廊下で待機していたため他の人に混じって教室の中に入っていく。
すると奈由は、素早く後ろを振り向いていたため直ぐに気づかれてしまったが、すごく笑顔になってくれた。
「あっ、お母さんとお父さんも来てくれたんだ! 」
奈由がそう言うとそらちゃん(大川先生)は、顔を赤くしながら僕の方を見つめてきてこう言ってきた。
「優くん、久しぶり!来てくれてありがとう! 」
「いえいえ!少し時間が出来ましたので、来させて頂きました」
僕がそう言うと、そらちゃんは教科書を手にとって授業を進めていく。
「そうだったんだね!それじゃ、みんな教科書42ページを開いてくれるかな? 」
すると児童たちは、みんな算数の教科書を開いていき、奈由の調子が絶好調になったのか、一番早くに用意が出来ていた。
「今までは、3+2とか2+4とかの1桁の足し算でしたが、今日からは片方が2桁の足し算をしていきたいと思います。それでは今から先生が2つの問題を黒板に書いていきますので、分かった方は手をあげてくださいね! 」
そしてチョークを持って黒板には『10+1』と『12+8』の2つの問題を書いていくと児童のみんなが一斉に手をあげていく。
「はい!はい!はい! 」
そらちゃんは、たくさんの児童が手をあげて張り切っている様子を見ながらも奈由を指名する。
「それじゃ、南川さんに1つ書いてもらうかな」
「分かりました! 」
奈由は、すごく張り切りながら黒板まで移動していき、チョークを手にとって少し難しい2問目の『12+8』の答えをゆっくりと書いていく。
そして奈由は、『20』と書いてからチョークをチョークを置き場のところにおくと、そらちゃん(大川先生)が驚きながらこう言った。
「南川さん、難しい方を解くなんてすごいじゃない!12+8=20 正解です! 」
「やったー!わたし、正解した! 」
「いきなり南川さんが難しい問題を解いてみせました!皆さん拍手してあげてください! 」
すると児童のみんなや保護者のみんなが、一斉に大きな拍手をした。




