story216 「1枚の用紙」
そして僕が奈由に質問する。
「なーちゃん、今日の入学式どうだった? 」
「すごく緊張したけど、教室に移動してから、担任の先生になった大川先生が、わたしに優しく話しかけてくれたお陰で、明日からも頑張れそうって思ったの」
「そうだったんだ。それはすごく良いことだね! 」
すると羽衣ちゃんが、奈由にこう言った。
「どんな先生にあたるのか、お母さんもすごく心配だったけど、大川先生なら大丈夫そうだね! 」
「わたし、明日からも頑張るからね! 」
みんなで奈由の今日の入学式について話していると、あっという間に家に到着して羽衣ちゃんが家の鍵を開けていくと、奈由が真っ先に家の中に入っていく。
「奈由、ちゃんと手洗いうがいするんだよ! 」
「うん、分かった! 」
そして奈由が洗面所に行くのを僕が観てから羽衣ちゃんに話しかける。
「羽衣ちゃん、ちょっと話したいことがあるから寝室に来てくれるかな? 」
「うん、良いけど深刻そうな顔してどうしたの?もしかしてそろそろ3人目の子供がほしいって言う話かなぁ!それならあたい、もちろん良いわよ! 」
「羽衣ちゃん、それは違うから! 」
「ち、違うって事は、あたいとはもうえっちしたくないってこと? 」
羽衣ちゃんが、一方的に話を進めていって一方的に勘違いしたまま落ち込みかけていくため、僕は恥ずかしそうにしながらもこう言った。
「そんなことないよ!これからも羽衣ちゃんとえっちなことしたいに決まってるじゃないか!って僕に何を言わせるんだよ」
「うふふっ、それなら良かった!あっ、優くんごめんね!あたいが一方的に話を進めてしまったから。それで実際は、どんな内容なのかな? 」
「実は、いちご荘がまだつぶれていないみたいなんだよ。詳しいことは、寝室で話すね」
「うん、分かった… 」
それから僕たちは、寝室に移動して僕は、ポケットの中に入れていた用紙を取り出して羽衣ちゃんに見せながら話していく。
「実は、今朝玄関の靴を揃えにいく時に家のポストの中にこの用紙が入っていて、そこにはこう書かれているんだ」
『いちご荘に関する重大なお知らせ』
この用紙は、いちご荘にお住まいだった方全世帯に送らせて頂いております。
7年ほど前に『いちご荘』の跡地として高層ビルの建設を立てる計画を実施させて頂くためにお住まいだった皆様に多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。
しかしその後、その跡地として建設予定でありました高層ビルにつきまして市議会や県議会、さらには国会でも議論するところまでに至りまして、長い年月をかけてこれまで100回近く議論して参りました。
ですが議論の結果、反対派が多くさらには、高層ビルを建設する予算があらゆる角度から想定致しまして、耐震などの必要性も踏まえた上でも莫大に必要になることが判明致しました。




