Story149「将来の夢」
僕が羽衣ちゃんに質問すると恥ずかしそうにしながら答える。
「辛いこととかでは、無いし別に勉強するのが嫌いなわけでもないけど、受験勉強に気合いが入らなくて困ってるのよ。あとは、あたいの部屋で話すからちょっと来て」
「そうなんだ。うん、分かった」
そして僕は、羽衣ちゃんに手を繋がれながら部屋に連れていかれて中に入っていく。
「あたいは、これからどうしたら良いのか分からないのよ。
別になりたいことだって特にないし」
「羽衣ちゃんならアイドル☆ハイスクールの一員になったら人気出そうだけどね」
「アイドルは絶対嫌だから。そりゃファンの人たちがみんな優くんだったら喜んでなりたいって思ったかもしれないけど、そうじゃないから嫌。ちなみに優くんと美憂ちゃんが働いてる服屋さんで働くことも考えてみたけど、あたい接客は向いていないからね」
「羽衣ちゃんは、今後の自分の将来について見えてこないと言うことを言いたかったのかな」
「そう、そう言うこと。だから大学を目指す意味があたいにはあるのかなって最近、思うようになってしまったんだよね。まぁ、昨年から投稿は、してなくて携帯の未送信メールに小説を10万文字くらい書いてみたりは、してみてるけど」
「羽衣ちゃん、小説書いてるんだ!どんな内容なの?すごく気になるよ」
すると羽衣ちゃんは、顔を赤くしながらこう言った。
「それは、優くんにも見せられないよ!だってすごく恥ずかしいもん」
「そうなんだね。でも羽衣ちゃんが書いている小説、すごく気になってしまうよ」
「そこまで言うなら、それじゃ完成したら恥ずかしいけど、教えてあげるよ」
「羽衣ちゃん、ありがとう!そうだ、小説家を目指してみたらどうかな? 」
「小説家って小説の投稿サイトでも数えきれないほどの作品が既にあるんだよ。あたいに出来るはずないよ! 」
「僕は、羽衣ちゃんなら出来ると思うけどね」
「そうなのかな。優くんに言われると試しに頑張ってみようかなって思うよ」
「だって仮に難易度が高くても、何かを目指して頑張っていくことがあるのとないのとでは、ぜんぜん違うと思うから」
僕が自分で思ったことを羽衣ちゃんに伝えると、羽衣ちゃんが頑張る気になっていく。
「確かにそうだね。やる前から諦めるのは、あたいらしくないしね。上手くいくか分からないけど、あたい頑張ってみるよ」
「僕は、いつでも羽衣ちゃんを応援してるから」
「ありがとう!優くん。それじゃ今からあたいお風呂の時間だから一緒に入らない? 」
「一緒にってこの前でも僕、すごく興奮してしまったんだよ」
「それは、あたいも同じだよ!あたいは、優くんと一緒に入りたいなぁ」
羽衣ちゃんが急に僕に抱きついてきながら甘えてきた。
明らかに昨日の討論会でズバッと答えた時の羽衣ちゃんとは、別人のようである。
でも僕には、すごく可愛く見えてしまっているのだ。




