Story142「深い事情が」
「だって男としてみてはいけない物を見てしまったから」
「謝るのは、私の方だよ。いくら寂しくて不安になるからって言っても優くんにはしたない物を見せてしまったから。嫌われる事は、分かってたよ」
ここで友華が下を向きながらいきなり泣き出してしまったのだ。
「はしたなくなんてないし、嫌いになんてなってないよ」
「でも気持ち悪いでしょ? 」
「ううん、気持ち悪くなんて全くないよ。むしろすごくドキドキしてしまったから。だって男の僕から見ると、ここまで甘えてくれる女の子なんていないと思うからね」
「純子ちゃんから聞いてはいたけど、優くんは本当にすごく優しいね」
「そんなことないよ。僕は、ただの変態だよ」
「ううん、それは違うよ。だって優くんが、もしここまでついてきてくれなかったら私は、完全に辛い思いをしていたから」
「僕は、別に当たり前の事を友華にしただけだけど」
「ううん、当たり前じゃないよ。そう言えば、優くんは純子ちゃんと一緒にいちご荘に住んでるんだよね? 」
「うん、まぁ他にも女の子はいて男は僕だけだけどね」
僕がそう言うと友華は、泣き止んでからこう言った。
「良いなぁ。私もいちご荘に一緒に住みたいなぁ」
「それが今は、人数がいっぱいだから新しい人は受け付けていないんだよね」
「そうみたいだね。純子が前に言ってた気がする。実は私、両親ともいなくて施設で過ごしてるの」
「そうなんだ。すごく大変そうだね」
「うん。いじめられる事が結構あって左腕には、蹴られた後のアザが残っていたりするの」
「それは、あまりにも酷すぎだよね」
「でしょ!でも行く宛が他にある訳じゃないから気づいたら精神面がどんどん弱っていって誰か私を救ってくれる人は、いないかなって最近では思うようになってしまったの。だからもし、いちご荘に空きが空いたら教えてくれないかな」
「うん、もちろん良いよ。でもそんな辛い環境だとは全く分からなかったから驚いてるよ」
「まぁ、普通に見ていたら元気で明るくて積極的な女の子にしか見えないと思うからね。ねぇ…優くん、こんな私だけど、これから仲良くしてくれる? 」
「もちろんだよ!それに僕は、友華ともっと仲良くなれたらって思っているから」
僕がそう言うと、友華は顔を赤くしながらこう言った。
「良かった。私も優くんとこれからいっぱい仲良くなりたいし、いつかは優くんを惚れさせて見せるからね! 」
「今でも十分可愛いと思うよ」
「ううん、もう少し私が大人になった時に優くんが私を欲しいって思ってもらえるような女の子になりたいから!それじゃ、そろそろトイレから出るけど誰にもこの事は話さないでよね。二人だけの出来事なんだから」
「わかってるよ、誰にもこの事は言わないから大丈夫だよ」
「優くん、ありがとう! 」
こうして友華の深夜のトイレ事件は、なんとか無事に解決することが出来てお互い仲良くなることが出来たのであった。




