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【完結】転生したら幼女のペットになりました  作者: SAK
メインストーリー
5/21

5.初勝利!

「……どうやら僕の負けのようだね、おめでとうリーファ」

「や……やったーっ!!」


 リーファのパパが投了し、初めて勝てた事に大喜びするリーファ。


「アリスのおかげだね、ありがとーっ!」


 リーファはそう言いながら、あたしをぎゅっと抱きしめる。

 ふんわりと香る石鹸の残り香に、リーファの匂いが混じりあい鼻孔をくすぐる。

 更に顔同士をすりすりされ、こども特有の少し高めの体温が感じられる。

 ……女の子同士とはいえ、やっぱりちょっとスキンシップ過剰じゃないかなあと思いつつも、愛情を真っ直ぐ向けてくれるのは嬉しい。


「あらあら、これはお祝いにリーファの好きな食べ物を作ってあげなきゃね」

「いいの!?」

「そうだね、お祝いだから何でも好きなものを言ってごらん。それと、次からは勝った回数ごとにご褒美を用意しておこうかな」

「ありがとー! パパもママも大好き!」


 リーファが二人に駆け寄り、パパに抱っこされて二人に撫でられる。

 二人ともとてもいい笑顔で、娘の成長を喜んでいるのが分かる。


 しばらくの間二人はリーファを愛でていたが、あたしの方に向き直った。


「さ、次はアリスの番だね」

『あ、あたしも勝って見せるもん!』

「アリス、がんばって!」


 リーファからの声援を受けながら、あたしの対局が始まった。




**********




「……これ以上の対抗策はないね、おめでとうアリス」

『や……やった……!』

「おめでとうアリス、私も嬉しい!」


 まるで自分のことのように手放しで喜んでくれるリーファ。

 あたしも嬉しくなって、ついついリーファの胸に飛び込んでしまう。


 リーファがあたしのして欲しい事を察したのか、そのままぎゅっと抱きしめてくれた。


「あらあら、まるで本当の姉妹みたい」

「そうだね、とても仲が良くていいことだよ」


 ……しまった、お二人のこと忘れてた。

 でもあたしは人間じゃなくて動物。ご主人様に甘えるのは普通……ということにしておこう。


 リーファはしばらくあたしを抱きしめてくれた後、あたしを撫でながらこう言った。


「次はママだね!」

『えっ……ええっ……』


 あたしが手も足も出なかったエファさんが次の目標……?

 ま、まあ目標は高い方が燃えるからいいのかな……?


「あ、わたしよりも強い人がこの家いるから、最終目標はその人になるかしら?」

「ええっ!?」

『ええっ!?』


 あたしもリーファも同じようにびっくりする。

 それもそうだ、エファさんよりも強い人がいるなんて知らなかったし、エファさんですら全く勝てる気配がないのに……。


「それがこちらです♪」


 エファさんが指し示した先にいたのは……執事さん。

 嘘でしょ!? あたしたちを見守ってくれてる執事さんが一番強いの!?


「わ、私、誰かと対戦してるところ見た事ない……」

「彼は強すぎて滅多なことでは試合はしないからね、なにせ僕とエファの師匠なんだから強さは折り紙付きだよ」

『ふわぁ……何か凄いことになってきた……』


 確かにあたしが代わりに駒を動かしてもらっていた時、手慣れた感じはあったもののまさかそこまでなんて。

 思わぬ伏兵にあたしもリーファも驚きっぱなしだ。


「よかったらリーファたちも彼に師事するといいよ。めきめき強くなれるはずだから」

「うん、パパ、ママ、私がんばる!」

『あ、あたしも!』


 こうして、あたしたちは執事さんに師事することになったのだった。


「あ、それと……初めて勝てたご褒美にお小遣いをあげるから、明日2人で町に行っておいで」

「わぁ……ありがとう、パパ!」


 リーファが目をきらきらさせながら大喜びする。

 以前町に行ったときは案内だけだったので、もしかしたらおいしいものが食べられるかも。

 そう考えると今からあたしもワクワクしてきた。


「さて、それじゃあ夕食の準備を頼んで来るよ。リーファの大好物のハンバーグだ」

「やったーっ!」


 この世界にもハンバーグがあるんだね。

 やっぱりあたしより前に転生してきた人たちが広めたのかな? それとも同じように食文化が進化していって……?

 でも、あたしもハンバーグは好物だから今から夕食が楽しみになったのだった。




**********




 翌日の昼過ぎ、あたしはリーファと執事さんの3人で町へと繰り出していた。

 以前とは違う場所で、いろんな屋台が並んでいる。

 これはつまり……。


「あたしの好きなもの、アリスも一緒に食べよ?」


 なるほど、食べ歩きなんだね。

 パパから渡されたお金は1000ガルド。周りの屋台の値段を見るに、1ガルド=1円ぐらいかなあ。

 1000円って、こどもには大金だよね。だからリーファがすごくワクワクしてるのが見てすぐに分かる。

 ちなみにうっかり落とさないように、お金は執事さんが管理してくれるようだ。


「さて、それではどれに致しましょうか、リーファ様」

「んーとね……おいもと、ブドウのジュース!」

「かしこまりました、しばらくお待ちくださいませ」


 へー、ふかし芋とブドウのジュースがあるんだ。

 お値段は……どっちも100ガルドかあ。物価も日本と同じぐらいなのかな。


「お待たせいたしました。熱いのでお気をつけて」

「ありがとー! アリス、それじゃ食べよっ」


 まずおいもをリーファが一口食べる。

 そして、味を確かめるように咀嚼し、飲み込む。

 それからおいもをフーフーして少し冷ましてから、あたしの口の前においもを移動させる。

 あたしは一旦顔を近づけて熱さを肌で感じつつ、ゆっくりと口を近づけておいもを口に入れた。


 まだちょっと熱い……けど、やっぱりそれがおいしい!


「えへへ、おいしい?」

『うん、すっごくおいしいよ!』

「この鳴き声は……喜ばれている時の声ですね。おいしいとおっしゃってますよ」

「やったー! アリスと好きなものが一緒で嬉しいっ!」


 そんな些細なことでも喜んでくれるリーファ。

 リーファが嬉しそうにしていると、あたしも嬉しくなる。


「それじゃブドウのジュースも分けっこしようね」

『うん!』


 その後、あたしたちは交互においもとジュースを食べたり飲んだりしながら、ゆったりとしたひと時を過ごした。

 リーファと同じものを食べて飲んで……幸せ……ってあれ?


 同じものを、食べて、飲んで……?

 こ、これって間接キス……!?


 しかも交互にしてるから何回も……!?


 それに気づいてしまったあたしは、顔から蒸気が出るぐらい恥ずかしくなってきた。

 うう……で、でも、女の子同士だしセーフだよね! そういうことにしておこう!


「アリス?」

『え、あ、うん! な、なんでもないよ!』


 急に話しかけられたので若干挙動不審になりつつも、リーファには心配をかけまいと振るまう。


「それじゃ、次はあのお店に行こう!」


 リーファが指し示した先にあるのは、アクセサリーショップ。

 やっぱりリーファも女の子、こういうのに興味があるのね。


 ドアを開けて店内に入ると、宝石の類やかわいらしい動物を模した小物など、たくさんのアクセサリーが棚いっぱいに並んでいた。

 リーファはそれらとにらめっこをしながら、おこづかいの範囲ないで買えるものを探しているようだ。


 数分後、リーファが選んだものは、赤色の綺麗なリボン。

 それを二つ持つと執事さんに会計をお願いし、店員さんに袋に入れてもらった。


「それじゃおこづかいもなくなったし、家に帰ろう」

『そうだね、今日はとっても楽しかったよ、リーファ』


 おいしいものを食べて、リーファに似合いそうなリボンも買えた。

 リボンを付けたリーファ、早く見てみたいなあ。


 そんなことを考えながら、あたしたちは帰路についた。




**********




「おかえり2人とも。今日は何をしたんだい?」

「えっとね、おいもを食べて、ジュースを飲んで……それからこれを買ったの」

「あら、綺麗なリボンね。早速付けてみたらどうかしら?」


 リーファがパパとママにリボンを見せると、2人ともそれを付けたリーファが見たいのか、着用を促す。


「えっとね、それなんだけど……1つお願いがあるの」

「分かった、なんでも言ってごらん」

「…………ってことなの」

「あらあら、それは素敵ね、うふふ」


 ???


 あたしがよく分かってないという顔をしていると、パパとママがそれぞれリボンを持ち、リーファとあたし、2人の髪の同じ場所にリボンを付けてくれた。


『……えっ』

「あのね、私……アリスとおそろいのものが欲しかったの。これから一緒に付けてくれる?」

『……もちろん!』


 あたしはアリスの胸に飛び込むと、顔を擦り付けた。




 こうして、あたしのこの世界での初めての宝物ができたのだった。

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