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【完結】転生したら幼女のペットになりました  作者: SAK
メインストーリー
3/21

3.休日

 あたしがこっちの世界に来て、初めての休日が訪れた。

 この世界も同じように7日で1週間みたいだけど、過去の転生者か誰かが広めたのかなあ。

 それとも偶然?

 でも、この国の基を作ったエールって人が異世界人ならあり得るかも?


「アリスー、パパのとこ一緒に行こ?」


 そんなことを考えていたら、背後からリーファに抱きつかれる。

 ちょっとスキンシップ過剰じゃないかなとは思うけど、あたしはペットの身だし、リーファの愛情表現だと思うと微笑ましい。

 あたしもそういうのが嫌というわけじゃなくて、嬉しいのは間違いないし。


 さておき、リーファのパパのことはちょっと気になってたし、二人は休日はどんなことをするんだろうと思ってたから、早速リーファに連れられてリーファのパパの部屋へと行くことにしたのだった。




「来たか、リーファ。それじゃ始めようか」

「今日こそパパに勝つもん!」


 二人はテーブルを挟み、向かい合って椅子に座る。

 そして真ん中に置かれているのは……。


『ボードゲーム……かな?』


 将棋やチェスのような盤の上に、駒のような物が並べられている。

 見た感じ、兵士や魔術師、騎馬兵などがモチーフみたい。


「アリス、見ててね!」


 リーファは私を膝の上(特等席)に置き、パパと試合を開始した。




「うーっ……負けました」

「うん、リーファも段々強くなってきてるね。これならもうしばらくしたら勝てるようになるかも」

「ほんと!? よーし、がんばらなきゃ!」


 負けたリーファを励ましつつ、やる気も出させるパパ。結構やり手だなあ。

 それにしても……このボードゲーム面白そう。


 というのも、こちらの世界に来てから娯楽というものがなくてね……。

 リーファと一緒にいるのは楽しいけど、ゲームみたいなものもやりたい気持ちがある。

 それに、あたしがこのゲームをできるようになれば、リーファの練習相手にもなれるかも。


「アリス、もしかしてアリスもこれやりたいの?」

「ほう、確かにさっきからずっと見てたしね。駒の動かし方とかを教えてあげてみるかい?」

「じゃあリーファが教えてあげる!」


 パパの言葉に反応し、指南役を買って出るリーファ。いい子だなあ。


「えっとね、この駒が重装兵で動き方はこうで……こっちは騎士で……」


 リーファがあたしに駒を持たせ、その後リーファがあたしの手を持ち、この駒はこう動くんだよと教えてくれる。

 なるほど、将棋よりはチェスに近い感じかも。

 チェスはなんか大人っぽくてかっこいい! って感じで少しだけ齧った思い出がある。

 盤面も将棋よりも狭くて、プレイしやすいと思った……んだけど、難しくて勝ったことはほとんどない。


「えっと、これで全部かな……?」

「分かりやすい解説だったね、リーファ先生」

「えっ、私……アリスの先生? えへへ、照れるなあ」


 教え方のうまさを褒められ、照れながら頭をかくリーファ。思わず愛でたくなるかわいさだ。


「さて、それじゃアリス……やってみるかい?」

『もちろん!』


 あたしは頷いて意志を示す。

 よーし、リーファにいいこと見せなきゃ!




 数分後。


「うーん……初めてにしてはこれは……」


 状況は恐らく五分五分といったところ。

 あたしがチェスの経験があることを知らないリーファのパパは、若干守りの姿勢に入っているようだ。


「アリス、すごーい……」


 すぐ近くで見ているリーファから感嘆の声が漏れる。

 よし、このまま行けばいいところまで行けるかも。


「じゃあ僕の手は……ここだね」

『!』


 リーファのパパの指した手は、失着(ミス)に見えた。

 これならもしかすると、もしかするかも……!


 あたしはその失着を見逃さず、一気に攻め立てた。


「おっと、危ない危ない」


 しかしリーファのパパはそれを悉く躱してくる。



 そして、気が付いたころには……。


『あ、あれ……? あたしの方が負けてる……?』


 盤面はいつの間にかあたしが攻められる側になっていた。


「ふふふ、さっきのは失着と思ったかい? あれはね、わざとなんだ」

『ええっ!?』


 いや、本気を出してないのは分かるんだけど、まさかわざと失敗したように見せてたなんて。


「アリスは凄く手堅くしてるから油断がなくてね。だから隙を作ろうと思ってね」

『あ……』


 そうだ、あの手の後『ここが攻め時だ』って思って……。


「どんな人でも『勝てる!』と思った時に気が緩んで油断をしてしまうものだ。覚えておくといいよ」


 そう言ってリーファのパパが指した手は……あたしの(キング)を詰ませるものだった。


『うう……悔しい……』


 あたしは頭を下げ、投了の意志を示した。


「お疲れ様。それにしても初めてでここまでとはね……リーファもいい練習相手が見つかったんじゃないかな?」

「あっ……ねえパパ、それじゃあ私がアリスと対戦してもいいの?」

「うん、リーファの部屋にも盤と駒を用意しよう。これでいつでも対戦できるようになるよ」

「ありがとー! パパ、大好きっ!」


 リーファがぱぁっと顔を輝かせながら、パパに抱きつく。

 たぶん、今まで休日にしかできなかったゲームが、あたしといつでもできるようになったのが嬉しいのだろう。

 もちろんあたしも嬉しい。リーファが楽しそうにゲームをしてるのを見ると、あたしも何だか楽しくなってくるからだ。

 ……リーファがあたしのご主人様とはいえ、あたし、リーファのことを好きすぎる気がする。

 でも、動物なんだからご主人様が好きなんて普通だよね。




**********




「楽しかったね、アリス!」

『うん、あたしも凄く楽しかった』


 お風呂に入りながら、今日のことを想い返す。

 あの後、すぐにリーファのパパが盤と駒を用意してくれ、更にゲームの基礎知識が書かれている本もプレゼントしてくれた。

 あたしは文字が読めるか不安だったけど、知らない文字なのにスッと頭に入ってきて『これが転生特典かぁ』と感謝した。

 その後は本を読みながら二人でゲームをして、勝ったり負けたりを繰り返し楽しい時間を過ごせたと思う。


「それじゃあ今日も私が洗ってあげるね」

『お、お手柔らかに……』


 リーファの洗い方は凄く優しくて気持ちがいいんだけど、やっぱり他の人に洗ってもらうというのは慣れないもの。

 ……そうだ!



「はい、おしまい。じっとしてて偉かったねー」

『……よし、作戦決行!』


 あたしは両手で石鹸を泡立てると、リーファの背中をゴシゴシと洗い始める。


「ひゃっ。……お返しに洗ってくれるの? ありがと、アリス」


 リーファはこちらを振り向きながら、優しい笑顔を見せる。

 その笑顔に応えるようにこちらも微笑み返し、どんどん背中を洗い終えていく。


「それじゃこっちもお願いー」

『えっ』


 リーファはこちらに身体を向け、一糸纏わぬ姿をあたしに見せる。


 さ、流石にそこまでするのはあたしには……まだ早いよぉ……。


 結論。洗ってもらうのも恥ずかしいけど、洗ってあげるのはもっと恥ずかしい。




 結局、リーファはメイドさんに身体を洗ってもらい、あたしは背中を洗うだけで終わった。

 リーファ……無邪気過ぎて強い……。




 こうして、初めての休日は楽しい一日となったのだった。

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