16.ある日の休日
王亀の一件以降、色々なことがあり過ぎてなかなか休日が取れなかったあたしたち。
しかし、『契りの儀式』の成功により、ようやく落ち着いた日々を取り戻せていた。
リーファも「町に遊びに行きたい」と珍しくちょっとしたわがままを言うなど、やはり忙しさに辟易していたようだ。
「それじゃリーファ、明日は町に行っておいで」
「王亀討伐の時のお金があるから、おこづかいは充分あるわよ」
王亀の素材は高く売れるらしく、王亀を倒した時にいたリーファ、執事さん、ライさん、レイさんの4人に均等に配分された。
倒せたのはあたしとリーファがいたおかげだから受け取れない、と固辞していた3人だったけど、リーファが「みんな一緒だから倒せたの!」とリースさんたちに訴えたため、均等配分となった。
確かにみんなが王亀の注意を引いてくれて、そして風魔法を使ってもらわなければどうしようもなかったもんね。
ちなみにリーファが持つには大金過ぎるからと、エファさんがリーファ用の金庫を購入してそれに入れ、必要な時に引き出す形になった。
こうして、リーファはしばらくお金に困らないことになったわけ。
だから……。
「えへへ、このバナナおいしいねアリス」
『そうだね、チョコがかかっててとっても甘いよ』
こうやって色々なものを食べ歩くようになったわけだ。
今までだと買えて1つか2つだったもんね。
でも、あまりに食べ過ぎてリーファが太らないか少し心配でもある。
ちょっとふくよかになっても、それはそれで可愛らしいと思うんだけど。
『あ、リーファ。ほっぺにチョコ付いてるよ?』
「んー……ね、アリスが取って?」
『もぉ、しょうがないなあ……』
あたしはリーファに顔を近づけると、ほっぺに口付けをしながら、舌を出してチョコを取ってあげる。
……今までなら人に見られるからと断っていたのだろうけど、もうあたしとリーファは『契りの儀式』を終えた仲だから、躊躇いなくこういうことができる。
この光景を見た人たちも、「やっぱり『契りの儀式』が成功するだけあって、仲がいいわねー」とか「羨ましいなあ……私もああいう関係になりたい……」などと好意的な見方をしてくれる。
正直、最初は女の子同士だから忌避されるんじゃないかと思ってたけど、受け入れてくれたようだ。
「んーっ、このジュースおいしい! ね、アリスも飲んでみて?」
『ありがとうリーファ……ん、確かに甘くておいしい……!』
「ね、ね、そうでしょ?」
リーファが自分がおいしいと思ったものが、あたしも同じということに喜んでくれる。
好きな人と好きなものが一緒って嬉しいもんね。もちろんあたしもリーファと味覚が似てるというのは素直に嬉しい。
……そういえば昔はこれ間接キスだ、ってすっごく恥ずかしがってたんだよね。
今ではもうそれ以上のことしてるからそうでもないけど、やっぱり意識はしちゃうな。
「アリス、次はアリスが欲しいもの食べよ?」
『そうだね、それじゃあ……』
こうして、あたしたちの休日はのんびりとした時間が流れていく。
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「アリス様! うちの子の調子がおかしくて……助けてください!」
「アリス、あの子のお話を聞いてくれる?」
『もちろん!』
そして、あたしはあたしでリーファとだけ言葉が通じることを世間に公表した。
『契りの儀式』の結果、あたしはそういう能力をもらった、という形でだけど。
もちろんエールさんたちには許可は取っている。
こうすることで、言葉が通じなくて困っている……例えば調子が悪いのに原因が分からない、といったことを解決できるからだ。
最初は公表するかどうか迷ったけど、困っていた子を助けた時に感謝され、あたしが人間と獣をつなぐ橋になれればと思った。
そしてこうやって公表しておけば、あたしとリーファがなんで密な連携が取れるのか……例えば合成魔法とかを使っても怪しまれないようになるわけだ。
人の役に立て、いつバレてしまうか分からない秘密を持たずに済み、そして少量だけど相談料としてお金も手に入る。
まさに一石三鳥というわけ。
あたしはそのお金を貯金して、次の誕生日にリーファにプレゼントをしようと思っている。
この世界で初めて貯めたお金は、リーファのために使ってあげたい。
……あたし、本当にリーファに心を奪われてるな。
リーファの喜ぶことならなんでもしてあげたいし、リーファの力になりたいと思ってる。
でも、一つだけどうしても気になることがある。
それは……。
**********
「アリス、僕たちに用事ってなんだい?」
「遠慮せずなんでも話してね、アリスちゃん」
あたしはリースさんとエファさんをリーファに呼んでもらい、相談をすることにした。
『あの……あたしもリーファも女の子だから、その……リースさんたちが孫が見られなくてがっかりしていらっしゃらないかと思ってまして……』
そう、女の子同士だからこその悩み。
あたしもリーファもこどもができない。
だから、リースさんもエファさんも孫の顔が見られないし、将来的にはこの家の血筋は断絶してしまうのだ。
「なんだ、そんなことか」
「ふふふ、アリスちゃんは優しいから悩んでいたのね」
『え、ええ……そんなこと……?』
「……ああ、僕たちはね、リーファが生まれた時から、ずっとこの子には幸せになって欲しいと思ってた」
「リーファが幸せと思うなら、どんな形であってもわたしたちは祝福すると誓ってたの」
どんな形でも、か……。
「リーファはね、アリスが来てくれてからとても幸せそうだったし、『契りの儀式』が成功してからはもっとアリスのことが好きになったのが分かるよ」
「わたしたちはね、そんなリーファが見られて幸せなの。だから、気に病まないでねアリスちゃん。そんな心配そうにしてたら、リーファも気持ちが暗くなっちゃうわ、ね、リーファ」
「うん……」
『ご、ごめんね、リーファ……』
「だから、アリス。これからもリーファのことを君に任せたい」
「めいっぱい幸せにしてあげてね、アリスちゃん」
『は……はいっ! あたし、絶対にリーファのこと、世界一幸せな女の子にしてみせます!』
「アリス、これからもよろしくねっ!」
こうしてあたしから迷いは一切無くなり、これからもずっとリーファの隣にいて、リーファを幸せにしてみせると改めて誓うのだった。




