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ダブり集

姉ちゃん3

作者: 神村 律子
掲載日:2009/10/16

 私は磐神(いわがみ)美鈴(みすず)。


 名前は気に入っているのだが、苗字は嫌い。


 何だか重々しそうで、私のセンスに合ってない。


 でも、この苗字は父の姓でもある。だから本当は好き。


 大好きだった父。


 私が六歳の時、交通事故で他界した。


 でも私にはヘタレな弟がいるので、泣いている暇はなかった。


 弟の名前は武彦。もしかすると史上最弱の弟かも知れない。


 そんなランキングないだろうけど。


 


 そんなヘタレな弟に何故か「女」がいる。


 おっと、下品かな。


 幼馴染と言えばいいのかな。


 その子は都坂(みやこざか)亜希(あき)。


 私と一緒で、苗字が重過ぎて名前が潰されそうな子だ。


 これは私の勘だが、亜希ちゃんは武彦に気があるようだ。


 でも武彦はその事に気づいていない。


 その辺も地味にヘタレだ。情けない。


 それにしても何で彼女は武彦の事が好きなんだろう?


 武彦(あいつ)の話では、高校でモテモテらしいのだが。


 趣味が悪いとしか言いようがない。


 あんなヘタレ男のどこがいいのよ。




 亜希ちゃんは何故か今日は武彦(やつ)の部屋にいる。


 あいつが赤点取ったので、追試らしい。


 クラスの委員長として学習指導に来ているというが、どうもそれだけじゃなさそうだ。


 いくらへタレでも、あんな可愛い子と二人っきりで長時間過ごせば、野生が目覚めるかも知れない。


 私は亜希ちゃんの身を案じて、定期的に巡回する事にした。


「ジュースでも飲む?」


 私はノックもせずにいきなりドアを開いた。


 衝撃の現場を見たいがために。


 でも二人は真剣に勉強をしていた。


 並んで座っているかと思ったが、小さなテーブルを挟んで向かい合わせに座っていた。


 家庭教師とその生徒みたいな構図。


 我が弟ながら本当に情けない姿だ。涙出そう。


「ありがとうございます、お姉さん」


 こちら向きに座っていた亜希ちゃんが顔を上げて言った。


 私は貴女のお姉さんじゃないわよ、なんて意地悪な小姑みたいな事は言わない。


「サンキュー、姉ちゃん」


 武彦は振り返りもせずに言った。


 私はグラスをテーブルに置いて、


「何かあったらいつでも呼んでね、亜希ちゃん。こいつ、人畜無害そうに見えるけど一応男だから」


とトレイで軽く武彦の頭を叩いて言った。


「ってえな、もう」


 頭を抑えて武彦が私を見上げる。亜希ちゃんはニッコリして、


「大丈夫です。武君は紳士ですから」


「そう?」


 私は武彦に疑いの眼差しを向けてから、部屋を出た。


「?」


 私は自分の感情に違和感を覚えた。


 亜希ちゃんが心配なので部屋を覗きに行ったのに。


 武彦が亜希ちゃんと仲良くしてないか心配している自分がいる。


 何の心配よ?


 むしろあんな弟に可愛い彼女ができた方が嬉しいじゃない?


 何だろう? そうは思えない私が確実に心の中にいる。


 嫉妬? まさか。何で弟の彼女に嫉妬するのよ。


 私は断じて「弟萌え」ではない。


 彼だっているんだし!


 何か腹立って来た!


 よし、決めた。


 亜希ちゃんが帰ったら、あいつにキャメルクラッチかけてやる!


 ヘタレだけど最愛の弟に。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか久々に「姉ちゃん」読んだ気がします。 いいなぁ… 僕も姉ちゃんにキャメルクラッチ食らいたいですw 最近樹里ちゃん漬けだったので、こういう神村さんの強気なキャラが新鮮に感じます。 法子も…
2011/05/07 17:39 退会済み
管理
[一言] 「姉萌え」しました。 番外編も読みましたけど、姉弟と亜希との関係がどうなっていくか、楽しみにしています。
[一言] この「姉ちゃん」シリーズ、マンガ的なテンポがあって読み易いですね。わたしもマンガ的なテンポを会得したいなと思って居るので、勉強に為ります。 何か名字がスゴイけど、このシリーズには、草薙ぎの剣…
2009/10/16 20:23 退会済み
管理
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