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もしかして、あなたもそう思ったことあります?

作者: 今は考えられません

ある日ラーメン屋に入った。その日は入社してまだ数日。まだまだ未来に希望しかなかった時期だ。懐かしい。


少し空いている店内だったが、こんな時に大きなテーブルに座る勇気が僕にはない。だって「なんだこいつ、1人で来て悠々とデカいテーブルを使いやがって。横暴なやつめ」と思われていないか心配になるからだ。誰もそんなこと気にしていないじゃないかも思いつつも、やはり1人用のカウンター席に僕は腰を下ろしラーメンを注文する。そのお店のおすすめらしい少し辛めのラーメンを注文した。

その待ち時間。斜め後ろにあるテレビを眺めると、有名人が心に沁みた曲を紹介する番組が放送されていた。僕は人から紹介された曲なんて簡単に心に染みてたまるかという少し捻くれた考え方を持っており、その際も同様の気持ちでその画面を眺めていた。すると心に染みる曲が出るわ出るわ、自分はこんなに簡単な人間だったのかと失望しつつも、紹介された一曲目から釘付けになっていた。


5分ぐらい眺めているとラーメンが出てきた。本当はラーメンを食べることが凄く楽しみで、本来の目的だったはずなのに、僕の心はいつしかこの番組を集中して見ることが目的に変わっていた。その時にテレビが斜め後ろにあるようなカウンターの席を選んだ自分を恨んだ。もっと集中してテレビが見れる席を選べよ。1人でも勇気を持って広めのテーブルの席に座れよと。


だけどそこから席を変える勇気も勿論なく、非常に見にくい角度でその番組を必死に見ながらラーメンをすすっていた。

申し訳ない話なのだが、その時に食べたラーメンの味は一つも記憶になく、覚えていることといえば、確か器が四角だったな、ということだけだった。

そうするといつのまにかラーメンがなくなってしまった。

その瞬間、僕がこのラーメン屋の席に座っていてもいい理由、権利がなくなった。

二宮和也が曲の紹介をしようとしている。それが物凄く気になったが、後ろ髪を引かれながらそのラーメン屋を後にした。

1人でも席に居続けられる図々しさが欲しいとも思う。でもそんな自分になりたいとは思わない。

こういう自分のところを、僕は好きになりたいと思う。せめて自分だけは愛してあげたい。

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