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第九話 転生勇者は異界で励む

 アラームがけたたましく鳴り響く。手探りでスマホを探して、数秒かけてアラームを止める。布団の中で大きく伸びをして、勢いよく起き上がる。

ありきたりな朝の風景。何かを忘れている気がするが、そんなのどうでもいい。久しぶりに帰って寝て起きて、やることと言ったら一つだ。

出勤。持って帰ってきた荷物を掴んで、そのまま家を出る。朝飯並びにこれからの食べ物は行きがけに買えばいい。

身体にインプットされた会社までの最短ルートを辿る。このまま行けば時間通りに出社できそうだ。

しかし、何かがおかしい。いつまで経っても会社に着かないのだ。次第に世界がぼやけてゆき、会社は遥か彼方へと消える――

「うおっ!?」

 目が覚める。こ アラームがけたたましく鳴り響く。手探りでスマホを探して、数秒かけてアラームを止める。布団の中で大きく伸びをして、勢いよく起き上がる。

ありきたりな朝の風景。何かを忘れている気がするが、そんなのどうでもいい。久しぶりに帰って寝て起きて、やることと言ったら一つだ。

出勤。持って帰ってきた荷物を掴んで、そのまま家を出る。朝飯並びにこれからの食べ物は行きがけに買えばいい。

身体にインプットされた会社までの最短ルートを辿る。このまま行けば時間通りに出社できそうだ。

しかし、何かがおかしい。いつまで経っても会社に着かないのだ。次第に世界がぼやけてゆき、会社は遥か彼方へと消える――

「うおっ!?」

 目が覚める。窓から射す陽の光が俺を照らしている。そうだ、俺は異世界に来たんだ…………。あまり現実味がないけど、間違いなく。

それにしても、こんなにゆっくり眠ったのは久しぶりかもしれない。なんなら就職してからは多分初めてだろう。ほとんど会社で仮眠を取るだけだったし。

布団の中で大きく伸びをして、勢いよく飛び上がる。ぐううううぎゅるるるるる。腹も鳴る。そういえば、ここに来てからまだ何も食べていないんじゃないか……?

もう二日も経つし、そろそろ何か腹に入れておきたい。昨日稼いだ分のお金で足りるかは知らないが、とりあえずここらへんで食事ができる場所を探すとしよう。

コンコン。

「すいませーん!」

 突然の来訪者。声から察するに多分受付嬢だ。俺はすぐに返事をして、ドアを開ける。

「朝食をお持ちしました!質素なものですけどね」

 開口一番彼女はそう言った。まさか俺はまだ夢の中にいるのか?

「これも昨日お伝えした新人冒険者向けのサービスの一環なんです。誰だって駆け出しの頃は何かと入り用ですからね~」

「す、すげえ…………」

 あまりの徹底ぶりに本音が漏れる。どれだけ新人冒険者を応援したいんだ。

「すごいですよね~、これも全部数年前にハヤト様が作った制度なんですよ~!」

「ハヤト様?」

 あまりに日本人のような名前に、俺は驚いて聞き返す。それともこれは祝福によって親しみやすい名前に補正されているのだろうか。

「ハヤト・クロイワ様っていう、剣士の方がいるんです!数年前にどこからともなく現れたと思ったら、魔王軍の幹部を一人倒したんですよ!

しかもその報奨金を使って各地に新人冒険者のためのシステムを整備したんです。すごいですよね……」

 それは凄い。俺ならパーっと遊びに使ってしまいそうだ。そのおかげで俺もこんなに恩恵を受けられているのだから、ありがたいったらありゃしない。

それよりも気になるのは、そいつがどう考えても日本人としか思えない名前をしていることだ。まさか俺の他にも転生してきた奴がいるのか?

思い出してみれば、女神は「異世界転生者には祝福を授けてこの世界で暮らしてもらうのが慣習」みたいなことを言っていたような気がする。

だとしたら、他に異世界転生者がいてもおかしくはない。むしろこの可能性にもっと早く気づくべきだったんだ。

俺の先輩とも言えるその存在――この世界に先に来ていた転生者たちを探す。探して、会えたから何というわけではないが。

同じ境遇の人間と接することで、得られることは多いはずだ。ただでさえ俺は女神の話を全部スキップしたんだから。


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