第七十三話 簡単魔法で篩を振るう
俺に足りなかったのは恐らくイメージだろう。試作魔道具で魔法を使う時はしっかりと風の刃をイメージしていたのに、すっかり忘れていた。目の前に泡が浮かび上がるのを想像して、しっかりと杖を握りながら祈る。
「あわあわあわわ!」
魔法陣が展開し光る。そして、俺の目の前に泡が現れ――弾けた!
「よし」
小声で呟く。大して難しい課題でもなかったし、そんなに達成感はない。
「おっ、早速成功したやつが出たかぁ。杖見せてみろ~」
いつの間にか起き上がっていたダメ教師に言われるがまま、手のひらの杖を渡す。正直この杖と魔法に何の関係があるのかさっぱりわからないが、こいつの様子を見る限り多分意味なんてないんだろう。強いていうなら、事故を防ぐために簡易な魔法と、暴走しにくい道具を用意したというところか。
「うおっ!お前すげぇな」
オーバーに褒められても一切心に響かない。こんなの簡単過ぎる。とはいえここは本来冒険者になる前、様々な知識を身につけるための場なんだから、最初はこれくらいでいいのかもしれない。最初から難しい問題を課されたら、やる気なくなっちゃうし。
「杖に傷ひとつついてない……。魔導師に向いてるぜ、お前」
こんなのも、どうせ全員に言っているリップサービスだろう。実戦経験があるぶん、たまたま俺が早く終わっただけ。バギッ。思考を遮るように、鈍い音が鳴る。音のした方を向くと、粉々になった杖だったものが、さらさらと落ちていた。折れたのか。
「普通のやつはああいう風に、杖が負荷に耐えられずに崩れ落ちる。魔力を上手く操って、適切な量で魔法を使えればお前みてぇに壊れない」
「まあ、別にこれが初めての魔法ってわけじゃないんで……」
魔道具の助けなしに、ちゃんとした魔法を使うのは初めてだが、聞いたコツは今までやってきたことそのものだった。とすれば、俺が普通に扱えて当然だろう。多分、実戦になったときに無駄な魔力を消費して簡単な魔法でバテないための訓練とか、そういう感じだろう。経験を積んでいる俺には些末なことだ。
「ふぅん?だとしたら、向いてるってのは釈迦に説法だったかぁ?言われなくても、魔導師になってるだろうしよ」
そんなことを言いながら、ニヤリとした顔つきでこちらを眺めている。そこまで担がれたらさすがにちょっと嬉しくなるな。本腰入れて、この世界のことを学んでいこうじゃないか。
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