第七十二話 魔導授業は一重に易く
「はい、じゃあ一人一本ね。取りにきてくださーい」
気の抜けた声の指示に従って、一応杖をもらう。これで魔法の練習でもするのか?
「じゃあね、やっぱ座学より実践てことで、みなさんにこれで魔法を使ってもらいまーす」
その通りだった。今のところ、期待を一切超えていない。それどころか、信頼を振り切って下にいる。
「魔法ならなんでもいいわけじゃなくて、俺がこの授業のために考えた魔法を使ってくださーい。今から説明を書きまーす」
黒板に文字を書きながら、もう片方の腕はぶらんぶらん揺らしている。この男はどうして教師になろうと思ったのか。
一通り書き終えたあと、そいつは
「こんな感じね。あとは各自でよろしくぅ」
とだけ言って、近くの机に突っ伏してしまった。堂々と居眠りをする気だ。仕方ない。とりあえず一旦試してみて、簡単にできそうなら帰ろう。黒板に書かれた文字を目で追う。魔法の説明というには乱雑で、「バーン」とか「シュルル」みたいな擬音が多用されている。そのうえ、字が汚い。俺が読んでいるのはこの世界の文字そのものではなく、祝福によって翻訳された文字だが、それでもなお読めない。どうせなら文字の綺麗さは無視して同じフォントとサイズで表示してくれるようにしてほしかった。そっちのほうが多分見やすいし。
とにかく、無駄な部分を読み飛ばしてみるに、これは泡をひとつ出すだけの魔法のようだ。俺の祝福よりも弱い。こんな簡単な魔法が使えないわけがない。俺は杖を握り、詠唱する。
「あわあわあわわ!」
気の抜けた詠唱と共に、魔法陣が現れる。が、泡は出ずに、魔法陣だけが消滅した。そんな馬鹿な。杖の握り方が悪かったとか?そう思いながら、全体をしっかり握っていたのを端っこだけに持ち替えてみたりする。
「あわあわあわわ!」
そのうえでもう一度試してみても、魔法陣が現れて消えるだけ。一体何が悪いんだ?黒板に書かれてあることを読み直す。読みにくいことこのうえないが、どうにか一から全て読む。
『魔法とは、自分の願いを叶えるための道具である。その過程として精霊などの力を借りるために、設計図である魔法陣が必要になる。しかし魔法陣を直接描画するのは大変非効率で、ゆえに対応するように使用したい魔法のイメージと対応する詠唱を行うのが基本である。』
頑張って読み解けた内容は大体こんなもんである。そしてこの説明を見て、この講義は俺に必要ないものだったと悟る。だってこれ、グロウスから聞いたことあるし。
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