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第七十一話 無気力と無気力の邂逅

 手元の書類に目をやる。こういう難しくて長ったらしい文章を読むのには慣れてないから斜め読みをする。ふむ。大体わかったような気がする。たぶん、レジュメのようなものだ。レジュメもまともに読んだことがないからわからないけれど。書いてある内容は至って簡単で、本当に俺のような何も知らない人に向けた講義らしい。


 ひとまず教室に入って、適当な席につく。俺のほかには大体中学生くらいの奴ばかりで、それぞれがまばらに座っている。この中で知り合いと一緒に来ていそうなのはほんの数名だけで、少し安心する。ここがエレベーター式に上がってくるタイプのスクールで、既にグループが完成していたなら、俺の心は折れていたことだろう。いや、だとしても依頼を休んで来させてもらっている以上、真面目に勉強するつもりではあるが。


 こそこそキョロキョロと自分でもわかるような不審な動きで周りを観察していると、いつの間にか教壇に人が立っていた。やる気のなさそうな顔で、服はシワだらけ、髪はボサボサ。あまりのダラけ具合に、俺の緊張までほぐされるくらいだ。いくらなんでも、もうちょっと身なりは整えたほうが……。そう思った矢先、そいつは欠伸混じりにこう言った。


「えー、それではぁ……講義を、始めまーす」


 マジかよ。なんとなくわかってはいたが、本当に教師だとは。それにしても、教室は半分も埋まっておらず、俺を入れても一桁しかいないように見えるが。やはりスクールに通う人間はそう多くないということか。


「それではね、えー……なんだっけ?」


 そいつは手元の紙をペラペラ適当にめくりながら首をかしげている。こんなんで講義が進行するのだろうか。


「あー、そうだわ!忘れてた、ちょっと待ってて」


 言うが早いか、ちょっと待っててと言ったとは思えないゆっくりさで教室を出ていった。早くも崩壊の危機である。ペトロネさんの紹介だからまあスクール自体に問題はないだろうが、そこで講義を行う人間には問題がありそうだ。



 待つこと十数分。いい加減帰ろうかと迷い、そして生徒の何人かが実際に席を立ったあと、そいつは帰ってきた。


「いやー、ごめんごめん。今日使う教材を忘れちゃっててさぁ。これね」


 掲げているのは小さな杖。子どもでも握れそうな手のひらサイズだ。ともすればオモチャにしか見えないそれは、トートバッグ大の袋から溢れていた。そんなに使わないだろ。

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