第六十九話 学校記憶は暗澹に満つ
当然だ。一端の冒険者が、最初から勉強することなどなかなかないだろうし。
「こちらの冒険者さんはちょっと訳ありなんですよ~。なんでも記憶喪失らしくて~」
「一度学び直すことで、知識の修復と記憶を取り戻すことを狙う、と」
クールで知的なイメージ通りに、スクールの受付嬢さんは素早く理解する。こんなに理解が早いなら、受付嬢よりもいい仕事はありそうなものだが。
「まあそんなわけなので、よろしくお願いしますね~!必要な書類は揃えてあるので!」
言いつつ、ペトロネさんは持ってきた書類をてきぱきと順番に並べる。仕事が早い。
「あ、ここは冒険者さんの自筆お願いします!」
など言われてペンを渡されれば、もはや書かない理由はなく。
「書類、全て確認しました。問題ありません」
「ありがとうございます!じゃあ冒険者さん、楽しんでくださいね!」
スクールの受付に来てから5分も経っていないんじゃないだろうか?あまりに早い手続きに、俺はたじろぐほかなかった。
「ではこちらにどうぞ」
教室まで案内される。あの頃を思い出す。まだ高校生で、将来に希望とまでは言わなくても、絶望はしていなかった頃。俺は受験する大学を選ぶべく、色々なオープンキャンパスを覗いてみようと画策していた。まあ候補らしい候補はあったが、自分の手で開拓するのが大事だと考えたのだ。だがそれが間違いだった。コミュニケーション能力に乏しい俺はオープンキャンパスを開催している大学を見つけて行くまではできるものの、そこで催されている学科紹介などのイベントには全く参加できず、空気感を掴めずにいたのだ。
それだけならよかった。行ったのに全然わからなかっただけなら、あんなに落ち込むこともなかった。てんでダメな自分に呆れた当時の俺は、一念発起して予約が必要なイベントに参加したのだ。確か説明会とか、そんな感じの。検索とコピペを駆使して、予約のメールを送るところまではどうにかなった。問題はその後。当日、実際にその大学を訪れた時だった。
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