第六十七話 無気力人間も鍛錬を欲す
強くなりたい。そんなありきたりな願望を、相談する相手はもちろん受付嬢さん。ギルドで鍛えるなんてことは無理だろうが、何かいい場所を知っているかもしれないし。
「鍛える……ですか。今の冒険者さんの強さだと、教えられることもないと思いますよ?」
期待に反して、返ってきたのはそんな答え。首をかしげる受付嬢さんは可愛いが、俺は強くなりたいんだ。
「単純な実力だけで言ったら、そろそろ自立できるくらいの強さです!もっと自信持ってくださいよ」
真っ直ぐな眼差しで褒められて、俺は少したじろぐ。俺はそこまで強い敵を倒していたのか。全部無力化していたから気づいていなかった。あまり実感が湧かないな……。
「でも、俺はもっと強くなりたいんです。奥義とか必殺技とまでは言いませんけど、何か使えそうなものってないんですか?」
「うーん……そういうのって自分で見つけるものですからねえ……」
二人揃って首をひねる。受付嬢さんの言っていることも一理あるが、今の俺にはそれを見つける段階にもない。
「そういえば、冒険者さんってどこまで記憶が残ってるんですか?」
何の気なしに、という風に受付嬢さんが問う。何が?、と答えそうになって踏みとどまる。そういえば、俺は記憶喪失でいつの間にか此処にいた、という設定なんだった。
「何も覚えてません。俺が知ってるのは本当に俺の魔法だけです」
「でしたら、一度スクールに行ってみませんか?知っていることがほとんどかもしれませんけど、何か記憶が戻るかも……!」
「行ってみたいです!」
そうだ。まず俺がやるべきこと。この世界に来て、初めにやっておくべきだったこと。この世界の基礎を勉強しようじゃないか。面倒ではあるものの、得られるもののことを考えればやらないわけにはいかない。
「わかりました~!では手続きをしておきますね!あと、しばらく依頼は出さないようにしますから。安心して勉強してくださいね!」
素早い手配と心遣い、痛み入る。もし俺が受付嬢さんの立場だったとしても、こんなに要領よくはないと思う。
「じゃあ早速、今日から行ってみます?」
「えっ?」




