第六十三話 討伐依頼に空手で臨む
店を出たあとで気がついた。俺、当面の武器がない。最初に貰った短剣はまだ持っているが、その威力はたかが知れている。こうなるともう、魔道具が返ってくるまで討伐依頼が来ないことを祈るしかないな……。
「最近冒険者さんの調子がいいので、難しめの討伐依頼です!」
翌日ギルドにて、にこやかな受付嬢さんからそう言い渡される。なんとタイミングが悪いのか。俺としてもどんどん難しい依頼をこなしていくのは本望だが、今はいかんせん攻撃力が足りない。
「どうしたんですか、冒険者さん?あまり顔色が優れないように見えますけど……」
思考が表情に出ていたのだろう、受付嬢さんが心配そうな顔でこちらを見ている。ダメもとで断ってみるか。
「挑戦できるのは嬉しいんですけど、他の依頼に変えることってできませんかね?」
「あ、お気に召しませんでした……?」
受付嬢さんがしょんぼりしてしまう。そんなつもりじゃないのに……。
「そういうわけじゃないですよ!ただ、いつも使ってる武器をメンテナンスに出しちゃってて……」
「ああ、そうだったんですね!類似品があればこちらから貸し出しもできますよ!」
一転して顔を輝かせる受付嬢さん。申し訳ないが――
「類似品、ないと思います……作った人が試作品だって言ってたんで……」
「そうなんですか?一応、武器の特徴だけでも」
「羽根の環がついてる杖の魔道具です。祈ると風の刃を出すことができます」
受付嬢さんの顔が曇る。
「冒険者さん、その武器どこで買いました……?」
「店名は忘れちゃったんですけど、商店街の方にある魔道具のお店です」
「背の低い女性が切り盛りしてませんでしたか?」
「受付嬢さんも知ってるんですか?」
「はい、彼女とは知り合いなので……なるほど…………」
受付嬢さんが頭を抱えてしまった。もしかして危険人物だったとか?
「彼女の発明品は一癖も二癖もあるんですよ。何か身体に不調とか出てませんか?」
「今のところは何の問題もないですね。多分大丈夫ですよ?」
「いや、絶対に何かあるハズ……どういう特徴のある魔道具なんですか?」
「なんでも、魔力がほとんどなくても使えるとか。実際俺も普通に使えてるので、看板に偽りなしだと思います」
「だとしたら、代わりに生命力を使ってるとか?」
「使ってても疲れてる感じはしませんね。それに、デメリットがあるならさすがに先に言うんじゃないですか?」
「彼女、腐っても商人ですからね……売るためなら短所を隠すくらいしますよ」
つい昨日、ポーションを買ったあとで不味いことを言われたあたり、受付嬢さんの言うことも一理ある。
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