第六十話 転生者も善悪に分つ
「多分ってことは、どんな祝福かも聞いてないんだ?」
「そうですね、とりあえず貰えるんだったらなんでもいいと思ってたんで……」
さすがに夢だと思ってたからスルーしたとは言わない。それで同意されたとしても気恥ずかしいし。
「つまりつまり、もっと研究の余地があるってことだよね?実に素晴らしい!」
呆れた表情から一転、興味津々な顔になる。彼女は一体何を考えているのだろうか。
「私の祝福でも全容を把握するのに時間かかりそうだからねー!またたまに来てよ、色々話したいこともあるしさ」
どうやら新たな研究対象が現れたことによる興奮だったらしい。まあ、身に危険が及ぶことはそうあるまい。俺の祝福の詳細がわかるなら願ってもない話だ。
「あ!そういえばそういえば!聞いたよ、暗闇の怪物を倒した話!あれももしかして祝福で?」
「そうです。なんで実際は倒したんじゃなくて……」
「無力化しただけかあ!そのあと裁判にかけられたってホントなのなの?もしかして悪いヒト?」
「いや、あれは誤解です!初対面の奴に難癖つけられて、引っ張られただけなんで!祝福を魔物に対する支援魔法とかなんとか言われて」
「それは災難だねだねー?まあでも、悪い人じゃないなら良かったよ!聞いた話だけど、異世界転生者で祝福を使って悪さをしてる人がいたんだってさー。怖いよね」
「なんて迷惑な……」
いくらチート染みた能力を持っているからと言って、横暴に振舞っていい道理なんてない。むしろ、それを使って人の役に立つことをするべきだろう。俺がギルドにお世話になることになったシステムを生み出した、ハヤト・クロイワとかいう奴のように。
「なんでも元の世界に戻りたくて暴れてたんだってさ。そんなことしたって帰れるはずないのに」
「元の世界に戻りたくて、か…………」
「バカバカしいよね?せっかく生き返らせてもらって、こんなにこんなに楽しい能力まで貰ったのに」
マキノは口をとがらせている。俺だって帰れるなら帰りたいんだけどな……。
「君もそんなことはしないでねでね?まあ、フツーに戻る方法を探すとかならどうでもいいけど」
「ハハ」
薄ら笑いで苦笑い。俺のことを助けてくれた受付嬢さんやグロウスに仇なすようなことは絶対にしない。
「それじゃ、またね!用があったらペトロネさん経由で連絡するから!バイバーイ!」
くるりとターンしながらマキノはまた奥へと消えていく。俺以外にも研究対象は多くあるのだろう。改めて見てもへんちくりんな建物を一瞥してから、俺はその場を去った。
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