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第五十八話 怪研究所の彼女は曇す

 そしてまた翌日。俺は受付嬢さんに呼び出しを受けた。行き先はギルド――ではなく、怪しげなラボ。魔術とか錬金術とか、とにかくそういう胡散臭そうなことをやっていそうなところだ。いや、この世界ではどちらも普通にあるかもしれないが。


「やや、来たね来たね」


 中から現れた人物も怪しさが溢れ出ていて、なんというか、関わり合いになりたくないタイプの人間だ。


「なるほどなるほど?見た感じ、新米じゃんか?」


「彼、自作魔法を使えるみたいなんです。詳細は不明らしいんですが……」


「ふーーーん?まあまあいっか、事情はどうでも。やってみよみよ、とにかくさ!」


 俺の預り知らぬところでどんどん話が進んでいる。いや、ここに来る前に一応話は聞いていた。「俺の祝福を解析する」とかなんとか。それで連れてこられたのがここである。


「ほらほらこっち、来て来て!」


 俺が困惑しているのもお構いなしに手を引っ張って中に連れ込もうとする彼女。腰に下げている試験管といい、妙に分厚い手袋といい、俺の本能が危険であると告げている。とはいえ受付嬢さんの紹介を無碍にするわけにもいかず、そもそも今日の依頼はなくなったから、ここから逃げてもやることはないのだ。俺は大人しく建物の中に入った。



 中に入った俺が最初に見たのは、水槽に入った巨大な靄の塊だった。俺三人分くらいの大きさがあるそれは、気まぐれに漂ったり、水槽の壁に突進したりしている。


「すごいでしょでしょ?これ、生きてるんだよ。魔法で作ったんだけど」


 魔法で生命を生み出せるのか。倫理的にどうなのかとかは――この人には関係なさそうだ。受付嬢さんは何を思ってこんな危険人物に俺を任せたのか。


「じゃあじゃあとりあえず、その自作魔法?この子に撃ってみてよ!」


「拘束せよ、影の鎖……!」


 促されるままに詠唱する。鎖が靄を貫き、纏わりつく。何の問題もなく発動する。


「これでいいですか?」


「十分十分!ありがとね!魔法陣も覚えたし、そこらへんで座って待っててよ!」


 言うが早いか、彼女は奥の方へと消えていってしまった。何が何だかわからないが、ここは言う通り待っていることにしよう。と思ったが、座れる場所がない。椅子は無数にあるものの、そのどれもが小物置きとして使われている。仕方がないから立ってるか……。



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