第五十三話 木端魔物の群生は落す
カウンターに受付嬢さんの姿が見えなかったので、近くにいた他の受付嬢に「ペトロネさんいますか?」と聞いてみる。名前を知った今だからできる呼び出しだ。
「おはようございます、冒険者さん!」
後ろから声がかかる。タイミング悪く席を外れていただけらしいな。元気そうな受付嬢さんを見ると、こっちまで元気が湧いてくる。
「今日は久しぶりの依頼です!で、ですよ。前回ゴブリン討伐の依頼に際して、冒険者さんは結局ゴブリンと戦わなかったわけじゃないですか。私としては色んな相手との戦闘で経験を積んで欲しいんですね。なので――」
「またゴブリンの討伐ですか?」
「ではなく!今回はオークも一緒に倒してきてください!よろしくお願いしますね!」
可愛くウインクする受付嬢さん。正直相手に逃げられさえしなければ、俺の負けはない。早速詳細を聞いて、俺はいつもの森に出発する。
徒歩十数分の森の、そのさらに奥。罠に細心の注意を払いつつ探索している。注視していれば意外と気づけるもので、落とし穴のあるところは妙に拓けていたりする。前回みたいに罠の先で惨状を見つけるなんてのは御免だ。それにしても、オークはおろかゴブリンとも出会わない。前とは違って気配が全くないなんてことはないが、探しても探しても見つからない。どうすればゴブリンを見つけられるのか。
最初にゴブリンの群れと出会った時のことを思い出してみる。あの時は俺が罠にかかって、抜けられずにもがいていたところに集まってきたのだった。それから遅れてオークがやってきて、絶体絶命の状況に陥ったのだ。あのとき、何故ゴブリンどもは集まって来たんだろう?罠にかかった獲物を処理するだけなら、少数のゴブリンと、オークだけがいればいい。それでも集まってきたことには何か理由があるはずだ。例えば、間抜けな人間がシンプルな罠にかかっていて愉快だったとか。罠にかかる前にゴブリンに小突かれたのもある。すぐに斬ったけど、あれはナメられているからこそやられたんだと思う。
そうなると、答えは簡単だ。一旦武器をしまう。手近な落とし穴を探して、わざとひっかかる。醜くもがいて焦ったような声を出す。どう見ても罠にかかった馬鹿な冒険者だ。
「ギイ?」
木の陰から、一体のゴブリンがこちらを覗き見ている。目が合ったから睨みつけて、もっともがいてみせる。当然穴からは抜け出せず、俺はゴブリンを睨みつけながら悔しそうな声を出している。
「ギャハッ!」
覗き見していたゴブリンが嗤って、どこかへと駆けていく。屈辱だが計算通りだ。
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