第五十一話 不愛想監視官は失態に屈す
「関係ないことはありません。休憩前にも言いましたけど、俺が助けを求めたってことは魔物に支援魔法をかけながら、その魔物を倒してくれって言ったも同然なんです。筋が通らないじゃないですか」
「どうせそれでも逃げ切れるくらいの支援をしていたのだろう?現に標的には逃げられた」
「俺の魔法は関係なく、もともと逃げ足が速い敵だったじゃないですか。だからこそ助けを頼んだんですし」
「俺の態度が冷たいのを見て、どうせ無視されるんだろうと思っていたんだろう?助けを求めたという事実のために、形だけ俺を呼んで」
「フレイル、静粛に。今は被告人が証言する時間です。それに――」
「君の言葉は、もう信じられない」
歯噛みするフレイル。いい気味だ。これで今までの証言も覆るだろう。もとより俺をこの場所に立たせているのはフレイルであり、その言葉が今崩された以上、俺が疑われる理由もない。
「他のフレイルさんの証言についても説明できますよ。僕は潔白ですからね」
「では問います。貴方の身元が不明なのは何故ですか?」
調子に乗っていたら痛いところを突かれたな。ここで俺の発言の信憑性が下がっても困るし、適当に誤魔化すとしよう。
「すみません、それは俺もわからないんです。気づいたら近くの草原で目覚めて、どこから来たのかも記憶もなくて……」
このくらいの言い訳が順当だろう。馬鹿正直に異世界から転生してきましたって言われても信じられるわけがないし。
「ふむ……まあいいでしょう。魔法について、もう少し詳しく話してもらっても?」
「目覚めたときに、唯一使えることと能力を覚えていた魔法です。多分、<バインド>を基にした自作魔法だと思うんですけど」
「それ以上の記憶はないんですね?」
「はい……」
ここで嘘を見抜かれたらどうしようという不安はあるものの、これ以上に説明することもできない。
「わかりました。監視官の偽証もあったことですし、この審問は以上で終了とします!」
裁判長の一声で、俺は解放される。あの顔を見るにまだ根本的な疑問は拭えていないのだろう。それでも俺を逃したのは、あまりにフレイルの失態が目立ったからか、俺がそれほど危険ではないと判断されたか。どちらにしろ、俺はこれからも真っ当に働いてギルドに貢献していくだけだ。身寄りのない俺を救ってくれた受付嬢さんと、色々と世話を焼いてくれているグロウスに恩を返すために。
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