第五十話 逆転光明は名前と共に
いったん通された控え室は実質のところ留置場のような場所になっていて、俺は見張り二人に挟まれてたいへん肩身の狭い思いをした。まあこれも疑いが晴れるまでの辛抱だと我慢はしたが。
待っている時間は意外と短く感じた。不安と緊張で気が気でないはずだが、不思議と心が落ち着いている。窮屈だが余裕がある。それもこれも、受付嬢さんが来たら俺の疑いが晴れるという自信の表れだろう。
かくして、受付嬢さんが法廷にやってきた。最初は魔女裁判みたいに一方的で圧倒的な理不尽な裁判だと思っていたのに、蓋を開けてみればただフレイルが暴れているだけで至極真っ当じゃないか。そしてここからフレイルの暴走を止めて、俺の無実を証明する。
「それではペトロネさん、証言していただきましょう。係官から話は聞いていますね?」
こんなところで受付嬢さんの名前を初めて聞くことになるとは思わなかった。こんなことなら、もっと早く聞いておくんだったな……。
「は、はい!先日の『アルラウネの根討伐依頼』について、ですよね!私は同行していないので詳しくはわかりませんが……」
緊張でちょっと上ずった声の受付嬢さん。もとい、ペトロネさん。こんなところまでご足労かけて申し訳ないな。だが重要なんだ。
「同行していなかったのなら、真偽のほどはわからないんじゃないかね、被告人?説明しなさい」
「時は依頼の真っ只中――ではなく、依頼失敗を伝えに来たところです。場所はもちろん、ギルドで」
「ああ、何かありましたっけ?」
受付嬢さんの顔から緊張が抜けて、可愛らしく首をかしげる。頼むから、忘れていてくれるなよ…………!
「あの時、僕が『フレイルさんに助けを求めたのに無視された』と言ったことを覚えてますか?」
「覚えてますよ!びっくりしたんですから、まさかフレイルさんが助けを求めている冒険者を無視するなんて、って……」
「で、その愚痴に対してフレイルさんが言ったことは?」
「確か、『確かに無視はしたけど、必要ないと判断したから』とか。そんな内容だったと思いますよ?」
苦虫を噛み潰したような顔になるフレイルと、目を丸くする裁判長。みんな表情が豊かで面白いな。
「ペトロネさん、それは本当ですか?!」
「は、はい……確かに聞きましたよ。細部は違うかもしれませんけど……」
あまりの剣幕にペトロネさんも引き気味だ。それもそうだろう、あれはあくまでも俺が軽口を叩いたのをフレイルが言い返しただけなんだから。誰だって単なる雑談だと思うだろう。その雑談の内容がこんなに重要な扱いを受けるなんて、予想がつくわけもない。
「フレイル!これはどういうことですか?説明しなさい!」
裁判長が怒りを露わにしながらフレイルを詰める。こうなると、なんだかフレイルも小さく見えてくる。ともすれば、このまま勢いで俺の疑いを全て晴らせるかもしれない……!
「それは……失敬。記憶違いだったかもしれません。確かに彼は助けを求めたかもしれませんが、それは本筋とは関係ないはずです」
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