第四十六話 疑惑冒険者は困惑と躍る
なんだ、そんなことか。少し前に「ちょっと難しいけど」とアルラウネの討伐依頼があったくらいだし、俺にちょうどいい難易度の依頼がないのだろう。むしろ休みが増えて嬉しいくらいだ。
「それと……場合によってはここを出てもらうことになるかもしれません」
「えっ?」
素っ頓狂な声が出る。もうここを出るに相応しい実力があると判断されたとか?
「いきなりで申し訳ありませんが……冒険者さんには疑いの目がかけられているんです。裏で魔族と繋がっているんじゃないか、と」
「え……?」
本当に心当たりがない。異物として警戒されるならまだしも、魔物と繋がっているだと?俺が身元不明の新米冒険者で、見たことのあるものに似ている、しかし異なる効果を持つ魔法を使うことは事実だ。それに関して審問にかけられたなら、俺は素直に全て話す。異世界から転生してきたことを信じてもらえるかはわからないが、少なくともグロウスのような例はあるし。
「とにかく、そういうことなので!まだどうなるかはわかりませんから、荷物をまとめたりはしなくて結構ですよ。それに、」
「それに、私は信じてます」
受付嬢さんがいつになく真剣な表情でこちらを見つめている。何か思うところがあるのだろうか。俺に事情はわからないが、俺のことを想ってくれているのはわかる。俺だって俺みたいな奴がいたら怪しいと思うのに、お人好しな人だ。
「そんなわけなので、改めてこちらをどうぞ」
そう言われながら差し出されたるはバスケット。夕食だ!
「ごゆっくり~」
俺は扉がしまり受付嬢さんの姿が完全に見えなくなるまで待った。夕食に貪りつくところを見られたら恥ずかしいから。
腹を満たした俺はその後特にやることもなく、行く末に不安を感じながらもできることはなく、大人しく眠りに就いたのだった。
そして次の日から数日の間、俺はこれといった行動を起こすこともなく、ただ散漫と休日を過ごしていた。杖の試し撃ちは結局行わなかった。疑われているのなら、余計な行動は避けたほうがいいと判断したからだ。飯を食い、部屋でぼんやりとし、夜になれば銭湯に行き、夕食を食べて眠る日々。一週間にも満たなかったはずのそれは、体感だけなら小学生の頃の夏休みに匹敵した。
そんな日々を破ったのは、フレイルからの呼び出しだった。朝食をのろのろと食べていた俺をノックで目覚めさせ、端的に一言、
「ついて来い」
とだけ言った。
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