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第四十四話 怪力男と邂逅

 新しい武器を手にしたならば、やることは一つ。試し撃ちだ。早速平原に出かけて使ってみよう――といきたいところだが、残念なことに時間が足りなさそうだ。今から平原に行くとなると、帰宅が夜になってしまう。どうせ明日以降も依頼で戦うことにはなるんだし、楽しみにとっておこう。


 まあそうなると散策を続行することになるわけで、しかし俺が入りたいと思うような店もなく、ひたすらぼんやりとそこらを歩くだけになってしまう。いや、これはこれで楽しいのだが。何も考えずに歩いていると頭が空っぽになって嫌なことも忘れられる。昔からやっているストレス発散法だ。一度気づいたら見知らぬ街にいた時は絶望したが。


 そしてこれの悪いところがもう一つ。下手すると前を見ていないこともあるから、人とぶつかりやすいことだ。それが大柄でガラの悪そうな男だった日には最悪だ。ほぼ間違いなく絡まれる。


「ん?お前、どっかで見た顔だな?」


 ちょうど今みたいに。


「いや、人違いだと思いますよ?」


 言いながら、そそくさと逃げる俺。こいつと関わるとロクなことがないと、俺の本能が告げている。


「あァ!?この前の!一緒に怪物退治したじゃねェかよ?」


 誤魔化しきれなかった。


「いやー、あの時は凄かったな!恥ずかしがるなよ、英雄クン!」


 前に俺が森で怪物を無力化したのを見られたときから、こいつは俺のことを何かすごい奴だと勘違いしているらしい。実際に俺がやったことと言えば一言唱えて拘束しただけで、逃げるのを止められやしなかったというのに。


「あの、すみませんが急いでるんで……」


 俺とはバレても逃げられはする。脇を小走りで駆け抜けて、そのまま一直線に逃げ出そうとしたその時、ふいに視点が高くなった。


「おいおい、逃げんなよ。せっかく友達に会ったんだからよお、ちょっとくらい話そうぜ」


 俺は持ち上げられていた。手足をバタバタさせてもがいてみても、抜け出せる気がしない。忘れていたが、こいつは怪力なんだった……!


「ちょうどそこにいい酒場があるからよ、連れてってやるよ」


 俺が「離せ!」と叫ぶのも聞かずに、デクラインはどんどん進んでいく。まだ人気のない時間帯だからか、俺たち以外に通行人の姿は見えない。まあ前回の森での周囲の反応を見るに、いたとしても助けてもらえるかは怪しいが。

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