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第四十話 魔物料理の注文を冒険

 別に迷ったら不安だから行ったことのある場所を最初に選んだわけではなく、単純に腹が減っているからだ。思えば依頼のある日は大抵昼飯を抜いていたが、腹が減っていなかったわけではない。せっかく時間があるのだから、ゆっくりお昼を食べてしまおうという算段だ。もちろん、前に行った時の値段に足りる金額は持っている。俺の稼ぎの数日分だから毎日来るのはさすがに憚られるが、たまの贅沢になら来てもいいだろう。改めて、ギルドのやっているサービスの有難さを思い知る。毎日朝夕食が出てくるのは破格だ。


 ちょっと逡巡してから店に入る。俺は個人経営店があまり好きではなく、それは偏に店員と客の馴れ合いが苦手だからだ。俺が馴れ合う側になるのも苦手。ただ俺は飯を食って金を払うだけの存在でいたい。"あの客"として認識されるのも無理だ。でも、この異世界にチェーン店やフランチャイズなんて概念はないだろう。いつか克服しなければならない苦手なら、早いうちに手を打っておくに限る。


 前回来た時同様、中は閑散としている。やっぱり主要客である冒険者は、昼間出かけているからだろう。適当な席について、メニュー表を開く。よくわからない料理ばかりだ。開いたはいいが、食事で冒険する勇気はない。


「すみませーん、コカトリスの香草焼きを一つお願いします!」


 グロウスのおすすめをまた頼む。確実に美味しい物を頼む。外食なんてそれでいいのだ。開拓は他の人に任せておけばいい。切り拓かれた道を歩んでいこうじゃないか。


「あーすんません!コカトリスの肉切らしちゃってて!他のならあるんですけど!」


 厨房から返ってきた返事は、元気ながら少し申し訳なさそうに、俺に数多の選択肢を突きつけた。自力で探さなければならない。美味しい料理を。否、美味しくなくてもいい。ゲテモノでさえなければ。再びメニューに視線を戻す。どれも想像がつかない料理ばかりで、選ぶには勇気がいる。特に名前から魔物の容貌が想起されるとき、そのモンスターっぽさのイメージが料理に繋がらない。何か、リスクなしに注文できる方法はないものか……。


 そうだ、と俺は思い当たる。魔物料理が珍しいから目につくだけで、別に他の料理を頼んでもいいじゃないか。メニュー表をめくり、他の料理を探す。一番最初に目についたのはドリンク。次にサラダ。主菜を探していると、最終的に魔物料理のページに戻ってきた。そんな馬鹿な。この世界には元の世界と同じような動物は存在しないのか?まさか人間以外の全ての生物が魔物というわけでもないだろうし。



 悩んだ末に、俺はアルラウネのサラダとサラマンダーの唐揚げを注文した。二つ合わせてもコカトリスの香草焼きよりは安かったので、前回たまたま高いメニューを奢って貰っていただけだった。そんなに高いメニューを当然のように奢ってくれたグロウスに感謝だな。

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