第三十九話 迷街の地図の標
「冒険者さんが悪い人じゃないのは私わかってますから!地図をどうぞ!」
精一杯のフォローとともに手渡される地図。何はともあれ、これで街を散策することができる。
それにしても俺のあの迷子が魔法によるものだとは思わなかった。単に俺の方向感覚が狂ったか、外部からの妨害だとしても、街の構造が特殊に設計されているとか、そこまでしか想定していなかった。魔法で実現するにはあまりにも手間だろう、と。
しかし実際には魔術師が数人がかりで発動している。できている。魔法の可能性の広さを思い知った。もしかすると、元の世界に帰る魔法なんてのも作れるかもしれない。少なくとも、転移魔法はあるわけだし。元の世界の座標さえわかればどうにかなるんじゃないか?ま
まあ、今の俺がそんなことを考えたってしょうがないわけで。俺には魔力も魔法を使う才能もないんだから、大人しくこの世界で生活しているしかない。当面の目標はやっぱりハヤト様とやらとの接触だな。そこまでの英雄ならば俺みたいなポンコツ相手でも親切だろう。少なくとも、表面上は。同じ世界から来たもの同士、何か話し合えることもあるかもしれない。それに、そいつが俺みたいにそそっかしくて女神からの説明をスキップするような人間じゃなければ、もっと高い視点から見たこの世界のルールみたいなのもわかるかもしれない。
全ては希望的観測。まずそもそも会うことができるかさえもわからないが、今はできることをやっていくしかない。そう、英雄に会って話すためにできることと言えば――
何もない。少なくとも、現状の俺には。
とにかく、街を歩き回ってみよう。そこで何か手がかりが見つかるかもしれないし、見つからないかもしれない。見つからなくても気晴らしにはなるだろう。ただでさえ今日は酷い目に遭っているんだし。俺は地図を片手に歩き出す。
地図に書かれている場所の名称は、どれも見たことのあるものだ。これは恐らく祝福の効果によるもので、翻訳の一部だと思う。つまり、名前から類推はできても実際に行ってみなければどんな場所かはわからない。とにかく行ってみること。それが大事だと思う。それを踏まえて、俺が最初に行った場所は――
グロウスにこの前奢ってもらった、酒場だった。
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