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第三十八話 守護魔法も英雄の調べ

 フレイルは既にいなくなっており、ギルドにはちらほら数人の冒険者がいるくらい。俺は真っすぐに受付嬢さんのところに向かうと、地図はないかと尋ねた。


「地図、ですか?あることにはありますけど……」


 言いながら引き出しを漁り、新しい地図を取り出す受付嬢さん。首をかしげているが、そんなに珍しいことだろうか?


「地図がなくても散歩には困らないと思いますよ?なんとなく歩いていれば、求める場所にたどり着くでしょうし」


「そうですかね?この前なんとなく歩いてたら家に戻って来ちゃったんですけど……」


「お、それはですね!この街全体にかけられている魔法のせいなんですよ!」


 途端に目を輝かせはじめる受付嬢さん。食いつくポイントがよくわからない。


「魔物が入ってこないように、周囲に街への道を惑わせる魔法がかけられているんですけど。その応用で、街の中でも目的地へ向かう悪い存在を惑わせているんです。ついでに、普通の人には道を知らずに歩いてもたどり着くように惑わせたりして。これも全部、ハヤト様の功績です」


 とは言いつつもまるで自分の功績のように胸を張る受付嬢さん。もしかしてファンなのだろうか。いやまあ、こんなにこの世界に尽くす人間がいたらそりゃあ好きになるのも当然か。よっぽどできた人間らしいな、そのハヤト様とやらは。きっと元の世界でも人望があったに違いない。それに比べて、俺ときたら…………。


「単なる魔物だけなら周辺にかけている魔法だけでも大丈夫なんですけど、たまに転移魔法で街中に侵入してくる魔物もいて。その対策にって考えられたのがこれなんです」


「でもそんなに大きな魔法なら、維持コストも大きいんじゃ……?」


「そうですね。魔術師の方々に交替で維持してもらっています。とは言っても、定期的に魔法をかけ直すだけではあるんですけどね。これに協力してもらえるのも、安全面だけではなく、術式にちょっと工夫をして街の人にもメリットがあるように取り計らうことで、この魔法による恩恵をわかりやすくしたからですよ!単に必要な魔法を考案するだけじゃなくて、そこから先、魔法を使う人のことまで考えるなんて、ハヤト様って凄いですよねぇ……」


 うっとりとした表情を見せつけられても、俺はイマイチ身に入らない。そいつがあまりに凄いってことはわかったが、その魔法ができるまでのこの世界を知らないわけだし。


「まあ要するに冒険者さんが道に迷うのは、冒険者さんが悪い存在だから――あれ?」


「えっ?俺って悪だったんですか?」


 確かに聞いた話によるとそうなるけれど、俺は純真無垢の完全に無害な存在だ。多分。

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