第三十七話 聖人君子が相対に脆く
「一応俺だけじゃ心もとないってんで、フレイルって教官の人も同行してたんですけど。俺のことずっと無視しやがったんですよね」
「それはそれは……って、え?フレイルさん?」
「知ってるんですか?」
よほど悪名高いらしい。まあ生徒にもあんなことをしているんだろうな…………。
「あのお人好しのフレイルさんが?確かにちょっと不愛想に見えるところはあるかもしれないけど……」
「お人好し!?」
あまりの驚きに素っ頓狂な声が出る。あれでお人好しなら俺は聖人君子だし、目の前の男は神そのものだろう。それとも、
「俺にだけ厳しいんですかね……?」
首をかしげる。それにしては受付嬢さんに対しても結構不愛想だった気がする。
「僕も直接教わったわけじゃないけど、かなりお世話になってるよ?少なくとも怪しいだけで冷たく接する人じゃないと思う」
グロウスがそう言うなら、実際そうに違いない。つまり、俺は怪しいだけではない、と。でも俺にはプラスアルファの要素はおろか怪しまれる要素さえない。俺の"祝福"は不審な自作魔法に映ったかもしれないが、先の依頼では真面目に取り組んでいたし、フレイルに危害を加えるような行動は微塵もしていない。肝心の能力も、何か魔物側に与するものではないだろうことくらいは推測できるはずだ。俺に疑われる要素はない。
「でも実際に無視されたのは事実ですよ?依頼中どころか、最初に受付嬢さんの紹介で挨拶したっきりで。俺が何か話しかけても聞こえてないんじゃないかってくらいで」
「あの人がそこまでするなんて、何か意図があるとは思うんだけど……うーん…………」
グロウスも首をかしげる。まあ理由がどうあれ、俺はあいつのことが嫌いだが。考えていても仕方がないな。
「まあ、悪い人じゃないってわかってよかったですよ。僕への対応は謎のままですけど」
「ごめんね、今度会ったら聞いてみるよ。またね」
グロウスは申し訳なさそうにそそくさと去る。別に悪いのはフレイルなんだから気にすることはないのに、どこまでもお人好しなやつだ。それはさておき、また暇になってしまった。大きな欠伸をひとつかまして、少し昼寝でもしてやろうかと思う。でも眠ることはできずに、ただ天井を見つめているだけ。
そうだ!ふと思いついて立ち上がる。今日こそは散歩してみようではないか。前回はなぜか家に戻ってきてしまっていたが、地図があればそんなこともなくなる。恐らくギルドになら街の地図もあるだろうし、それを片手にぶらぶら歩いてみよう。そうと決まれば、まずはギルドに行こう。数秒ののち、ギルドに入っていく。
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