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第三十四話 植物魔物の根本は迅く

 事前の情報によれば、アルラウネの根は平原に生える植物に擬態している。しかもそれを大量のアルラウネの中から探すのだから、見つけるのさえ一苦労だ。一応、先に発見後の対応を頼んでおくとしよう。


「あの、フレイルさん?俺多分アルラウネの根を見つけられたとしても倒すことはできないんで、手伝ってもらっても……?」


「…………」


 返事はなし。俺の言葉は届いているんだろうか。無視するにしても程がある。ここまで非協力的な態度を取られたのはこの世界に来て初めてだ。まあ、どこの世界にも冷たい奴はいるか。俺はコミュニケーションを諦めて、大量のアルラウネと対峙する。この中に潜む根を探さなければならない。うかつに近づくと前みたいに全身を噛まれて大変なことになるはずだ。となれば、やるべきことは一つだけ。


「拘束せよ、影の鎖……拘束せよ、影の鎖……」


 念のため小声で、詠唱を繰り返す。今のところこの能力に回数上限は見られないし、全てのアルラウネを無力化することができれば、安全に探すことができる。後ろを振り向くと、フレイルが少し離れたところから俺の様子をうかがっていた。気にしてもしょうがないので、俺は詠唱を続ける。一つ唱えるごとに魔法陣が展開されて、影の鎖がアルラウネに纏わりついていく。魔法陣は重なって、最早いくつ現れているのかわからない。


 しばらく続けていると、詠唱しても新たに魔法陣が現れなくなった。残った魔法陣から影の鎖が射出され、アルラウネに纏わりついていく。そして最後のアルラウネが拘束されたとき、魔法陣は――たった一つだけ残っていた。その魔法陣から現れた鎖は、地面を目指して放たれた。なんの変哲もない、雑草が生えている場所に反応を示す。グルグル回る鎖に違和感を覚えた俺がそこに注視していると、雑草に見えたその植物がぴょんと跳ねた。


 アルラウネの根だ!


 俺は慌ててフレイルの方を見る。さすがにここまで来て何もしないということはあるまい。俺にできるのは無力化までで、こいつが逃げるのを止めることはできない。受付嬢さんもいざという時は力になってくれるはず、とか言ってたし。いや、あの時もフレイル本人が同意していたわけではないが。


「フレイルさん!」


 叫んで、俺は背中に重みを感じる。見ると、いつの間にかアルラウネたちに噛みつかれていた。無力化は済んでいるから痛くもかゆくもないが、ただただ身体が重い。どうにか振り払おうと飛んだり跳ねたりしてみても、食いついて離れない。まあ、これはわかっていたことだ。前回もそうだった。


「フレイルさん!根を!お願いします!」


「…………」


 相変わらずの無視。むかついてきた……!


 こうなったら俺がどうにかするしかないと思って根を追いかけるも、相手はかなり素早いし、俺は全身噛みつかれて身体が重いしで、すぐに見失ってしまった。まあ、また場所さえ特定できれば鎖を目印にできるかもしれないが…………。


 と、そこで俺はある疑念を抱いた。俺の能力って、いつまで効果があるんだろう?さすがに無制限ということはあるまい。俺から一定の距離を取るか、もしくは拘束されてから一定時間経過するとか、とにかく何も制約がないことはない、はずだ。多分。

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