第三十二話 不愛想男の視線は冷い
ギルドはガラガラで、他の冒険者はほとんどいない。みんな昨夜の出来事で疲れてしまっているのだろうか。俺は真っ先に受付に向かうと、上機嫌でバスケットを返した。
「来ましたね?冒険者さん。来てくれて嬉しいです」
それに対する受付嬢さんの反応はあまり芳しくない。いや、表面上は友好的に接しようとしてくれている。と思うのだが、奥に潜む敵意というか警戒心というか、とにかくあまり良く思っていない感情が隠しきれていない。こういうのは前の上司の常套手段だった。コミュニケーション能力が低くて、不満はあるんだけどあまり伝えようとしないタイプ。最初は俺も汲み取ろうと思って相手から感情を引き出そうと頑張っていたが、得られたものといえば怒号だけだったからいつの間にかやめてしまった。まあ、今の受付嬢さんのは建前で仲良くしようとしているんじゃなくて、仲良くしてあげたいけど心の底では引っかかっている、という具合なのだろう。
「今日の依頼も討伐です!――ですが!」
受付嬢はわざとらしい動きで後ろにいた人物を紹介する。
「こちらの!フレイルさんと一緒に向かっていただきます!」
フレイルと呼ばれたその男は細身色白で見るからに不健康そうだ。顔色もあまり良くなさそうだし、目の下にできているクマはまあまあ深い。その目でこちらを不愛想に睨みつけているものだから、身体がこわばってしまう。
「フレイルだ。今日は依頼に同行する」
フレイルは低く冷たい声でそう言い放つと沈黙した。こいつとはどうも仲良くなれそうにないな。
「フレイルさんはスクールの教官をしていたこともあって、冒険者さんの力を見てもらうにはうってつけの人材なんです!
今回の依頼は平原にいる魔物、アルラウネ――の、根元を破壊していただきます!」
「アルラウネの根、ですか?でも俺、そんなに力ないですよ?」
昨夜の件で買い被られているような気がする。俺にできるのは無力化だけで、別に高火力の魔法を撃てたりするわけじゃないんだが。
「そこでフレイルさんの出番ですよ!もし問題があれば転送魔法を使って安全な場所まで脱出していただきますから。これは試験のようなものです」
なるほど、と俺はフレイルに視線を移すも、本人は素知らぬ顔でこちらを見つめている。本当に危ないときは助けてくれるんだろうな?
「わかりましたけど……」
不信感たっぷりにフレイルを見る。受付嬢さんを信じていないわけではないが、こいつに背中を預けられるかというと怪しい。
「大丈夫ですよ、フレイルさんは……その…………」
「口下手なだけですから!」
ちょっと無理のあるフォローに、空気が凍りつく。こんな状況をどうにかできる魔法でもあればいいのにな。
かくして、俺は平原に向かった。
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