第三十一話 過剰空腹は犬の如く
腹の虫がアラームの代わりと言わんばかりに、唸る腹の音と共に起床した。疲れはとれたが空腹でたまらない。思えば長い夜だった気がする。そのほとんどが寝れずに天井を見つめていた時間とデクラインに振り回されていた時間なのだが。
ノックの音と受付嬢の呼ぶ声に、俺はたまらず勢いよく扉を開ける。朝食の時間だ!
「冒険者さん、朝食の前に聞きたいことがあります」
むっとした顔の受付嬢さんが言う。バスケットは後ろ手で持っているようで、こちらには見えない。殺生な……!
「な、なんですか!?」
おやつを目の前にして待てを命じられている犬のように、俺の視点は受付嬢さんの腕に固定されている。もうなんでも話すからさっさと朝食をください。
「昨夜のことです。なんであの場所にいたのか――」
「言ったじゃないですか!あのデクラインとかいう男に引っ張られたんですよ!」
「じゃなくて!あの後デクラインさんから聞いたんですけど、あの鎖を出したのが貴方って本当ですか?」
「えっ」
完全に昨日勝手に森に行ったことを責められる流れだと思っていたので、素っ頓狂な声が出る。
「そう、ですけど……?」
「魔法を自作したんですか?あんな魔法、見たことありません…………!」
なるほど、受付嬢は俺が自作魔法で怪物をどうにかしたと思っているらしい。まあ大体合っているだろう。祝福も、言ってみれば固有魔法みたいなものだし。
「自作した、とは少し違うんですけど。とにかく、俺が撃った魔法で違いないです」
「わかりました……あとで話があるので、ギルドの方まで来てくださいね。その時に今日の依頼についても話しますので……」
「はい!」
自分ではわからないが、俺は今多分目を爛々と輝かせているだろう。もう抑えられない。早くごはんをたべたい。
「朝食、どうぞ……」
「ありがとうございます!!」
受付嬢はやや引き気味にバスケットを渡してくる。悪いね。こっちはもう限界なんだ。
「ごゆっくり……喉に詰まらせちゃダメですよ?」
こんな時でも注意してくれるのは、一重に受付嬢さんの優しさだろう。本当に頭が上がらない。
それはそれとして。
「いただきます!!!」
俺は考えるより先にパンを口に含んでいた。空腹は最高のスパイス。間違いない。夢中になって貪って、俺が我に返ったのはバスケットの底をむしって口に入れようとした時だった。
いくら勢いよく食べていたとはいえ、さすがにそんなものを食べてはいけない。第一、このバスケットだって借り物だし。とりあえずギルドに行くとしよう。俺はバスケットを片手に家を出た。
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