第三十話 受付嬢の救済の声
俺の中身がスクランブルエッグになるのを止めてくれたのは――受付嬢だった。
「彼を離してあげてくれませんか?その、苦しそうにしてますし」
「え?おお、わかった」
急停止したからクラクラするけど、それでも揺さぶられ続けるよりマシだ。俺は地面に手をついて感覚が安定するまで待つ。少ししてから立ち上がると、そこには驚愕と困惑、それにほんのちょっとの怒りが入り混じった表情の受付嬢が立っていた。
「なんでここにいるんですか?」
思った通りのことを言う。それもそうだ。俺が受付嬢の立場ならそう言うから。
「成り行き、というか……あいつに連れてこられたんです」
俺は男を指差しながらそう言う。責任を押しつけてしまって申し訳ないが、嘘はついていない。こいつがいなかったら俺はここにいなかった。
「デクラインさん、本当ですか?」
男をムッとした顔で見ながら受付嬢は言う。否定はすまい。本当なのだから。
「本当だぞ?だってよぉ、こいつも来るっていうから…………」
「誤解です!誤解を解こうとしてたら引っ張られて、ここに――」
受付嬢の目は全てを見通しているかのように呆れで満たされて、俺の弁明など無駄だと言わんばかりにかぶりを振った。もしかしてもうバレたのか?
「まあわかりましたよ。無事ならそれでいいんです」
ぷいとそっぽを向いて、受付嬢は他の冒険者のところへ行ってしまう。多分、まだ仕事が残っているのだろう。余計な心配をかけてしまって申し訳ないな。とはいえ、怪物を撃退するのに一役買ったのは俺なんだから、自慢したい気分もあるが。相手にもされないだろうな。平均よりも能力の低い新米冒険者が怪物を無力化したなんて話、信じるほうが馬鹿らしい。
とりあえず俺は二度と酷い目に遭わないようにデクラインから離れる。あの怪物を追跡することはできないみたいだし、今日のところはもう帰るとしよう。迷わないように解散していく冒険者の後ろをこそこそついていく。これで帰り道は安心だ。
ほどなくして街に出て、俺は無事に家に着いた。やったことと言えば一度詠唱しただけだが、色々振り回されたせいでかなり疲れた。ほとんど全てがデクラインのせいだ。
少し汗をかいたから風呂に入りたいが――睡魔がそうさせてはくれなかった。俺はいつの間にかベッドに倒れていたようで、次に気づいた時には朝になっていた。
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