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第三話 固有能力は凄みを欠く

 THE・ファンタジーの世界。俺の目の前に広がる街並みは、そう形容するのが相応しい。レンガで舗装された道路の上を、馬車……馬車?

馬によく似た知らない動物が車を牽いている。文明は恐らく俺の知るところの中世で、実際に検証してみれば穴だらけなのだろう。

だが、今はこの雰囲気が心地良い。物語の主人公になったような気分。いや、今俺は実際に自身の夢の中で主人公になっているのだ。異世界転生してきたわけだし。

 ここまで連れてきてくれたドラゴン乗りの騎士は用事を思いだしたとかなんとか言ってさっさとどこかに行ってしまったが、

「とりあえずここを訪ねるといい」

 と、ギルドの場所を教えてくれた。迷子にいの一番に教える場所がギルドとも思えないが、そこはまあ余計な手間を省きたがる俺の悪い癖が出たのだろう。

ひとまず教えてもらった通りに道をたどってみる。すると、ほどなくして大きな看板が見えてくる。

『アンフェイガー・ギルド』

 カタカナとして読めるが、本当は異世界の文字で書いてあるんだろう。これも女神から貰った祝福とやらのおかげだ。俺は軽い足取りでギルドへと入り、

中のカウンターにいる女性に話しかけた。

「あの、すいません」

「あ!新人冒険者の方ですか!?」

 さすが話が早い。ここから俺がチート能力を発揮して、能力を鑑定する魔道具とかの故障を疑われるまで秒読みだ。さて、俺はどんな能力を持っているのやら。

思いっきり大剣を振り回して戦うのも魅力的だが、やはりここは少し魔法を唱えただけであらゆる問題を解決できる大魔導士だろう。なにしろ俺は面倒臭がりだ。

「それでは奥の部屋で冒険者ランクのための能力測定を行いますので、魔道具などを身につけていましたら外しておいてくださいね~」

「準備にはちょっと時間がかかるので、お待ちください!」

 受付の女性の案内に従い、更衣室のような場所で待機する。壁にはこれまでの能力測定の上位スコアが乗っており、魔力や筋力がSランクの冒険者が名を連ねている。

ここでSランクが提示されているということは、俺は恐らくSSSランクくらいか?とにかく測定の係の人が驚く姿が楽しみだ。

「では、こちらに……」

 準備が整ったようで、奥の部屋に入る。そこは色々な器具(魔道具?)と武器が揃っており、まさに測定のための場所、という感じがする。武器も用意してあるということは、

適性のある武器なんかも調べてもらえるのだろうか。ぼうっと眺めていると、並ぶ武器の中に刀が紛れていくことに気づく。

「武器の適性は、職業の適性のあとに調べますからね~」

 係員(というか、受付の女性)に釘を刺されてしまった。武器に興味津々だと誤解されてしまったらしい。まあ、それはそうか。

「ではまず最初に、これを振ってみてください」

 渡されたのは大きな棍棒。表面に鎖が巻き付けてあるのは、重しの代わりということだろうか。見るからに重そうなそれを持ち上げてみる。

かなり重い。振ることはおろか、ほんの少しだけ床から浮かせることしかできない。まあ、これは予想の範囲内だ。俺はもともと運動するタイプじゃないし、

剣も魔法も扱えるってのはいくらなんでも都合良すぎだ。あまりにも現実とかけ離れていると没入感が薄れてしまうからな。まあ、こんなファンタジー世界で何を言っているんだ

という話ではあるが。

「ふむふむ……では次、こちらの水晶を見つめてみてください」

 棍棒を返し、摩訶不思議な色をした水晶を見つめる。見ている間も色が変わり続けている気がする。模様が浮き出ては消え、水晶に呑み込まれるような感覚を覚える。

足元がふらつき、倒れそうになってしまう。係員さんに支えてもらいどうにか体勢を立て直すが、気分が悪くなってしまった。

「うーん…………」

 彼女は難しい顔をすると、俺の肩を叩いてこう言った。

「ぽ THE・ファンタジーの世界。俺の目の前に広がる街並みは、そう形容するのが相応しい。レンガで舗装された道路の上を、馬車……馬車?

馬によく似た知らない動物が車を牽いている。文明は恐らく俺の知るところの中世で、実際に検証してみれば穴だらけなのだろう。

だが、今はこの雰囲気が心地良い。物語の主人公になったような気分。いや、今俺は実際に自身の夢の中で主人公になっているのだ。異世界転生してきたわけだし。

 ここまで連れてきてくれたドラゴン乗りの騎士は用事を思いだしたとかなんとか言ってさっさとどこかに行ってしまったが、

「とりあえずここを訪ねるといい」

 と、ギルドの場所を教えてくれた。迷子にいの一番に教える場所がギルドとも思えないが、そこはまあ余計な手間を省きたがる俺の悪い癖が出たのだろう。

ひとまず教えてもらった通りに道をたどってみる。すると、ほどなくして大きな看板が見えてくる。

『アンフェイガー・ギルド』

 カタカナとして読めるが、本当は異世界の文字で書いてあるんだろう。これも女神から貰った祝福とやらのおかげだ。俺は軽い足取りでギルドへと入り、

中のカウンターにいる女性に話しかけた。

「あの、すいません」

「あ!新人冒険者の方ですか!?」

 さすが話が早い。ここから俺がチート能力を発揮して、能力を鑑定する魔道具とかの故障を疑われるまで秒読みだ。さて、俺はどんな能力を持っているのやら。

思いっきり大剣を振り回して戦うのも魅力的だが、やはりここは少し魔法を唱えただけであらゆる問題を解決できる大魔導士だろう。なにしろ俺は面倒臭がりだ。

「それでは奥の部屋で冒険者ランクのための能力測定を行いますので、魔道具などを身につけていましたら外しておいてくださいね~」

「準備にはちょっと時間がかかるので、お待ちください!」

 受付の女性の案内に従い、更衣室のような場所で待機する。壁にはこれまでの能力測定の上位スコアが乗っており、魔力や筋力がSランクの冒険者が名を連ねている。

ここでSランクが提示されているということは、俺は恐らくSSSランクくらいか?とにかく測定の係の人が驚く姿が楽しみだ。

「では、こちらに……」

 準備が整ったようで、奥の部屋に入る。そこは色々な器具(魔道具?)と武器が揃っており、まさに測定のための場所、という感じがする。武器も用意してあるということは、

適性のある武器なんかも調べてもらえるのだろうか。ぼうっと眺めていると、並ぶ武器の中に刀が紛れていくことに気づく。

「武器の適性は、職業の適性のあとに調べますからね~」

 係員(というか、受付の女性)に釘を刺されてしまった。武器に興味津々だと誤解されてしまったらしい。まあ、それはそうか。

「ではまず最初に、これを振ってみてください」

 渡されたのは大きな棍棒。表面に鎖が巻き付けてあるのは、重しの代わりということだろうか。見るからに重そうなそれを持ち上げてみる。

かなり重い。振ることはおろか、ほんの少しだけ床から浮かせることしかできない。まあ、これは予想の範囲内だ。俺はもともと運動するタイプじゃないし、

剣も魔法も扱えるってのはいくらなんでも都合良すぎだ。あまりにも現実とかけ離れていると没入感が薄れてしまうからな。まあ、こんなファンタジー世界で何を言っているんだ

という話ではあるが。

「ふむふむ……では次、こちらの水晶を見つめてみてください」

 棍棒を返し、摩訶不思議な色をした水晶を見つめる。見ている間も色が変わり続けている気がする。模様が浮き出ては消え、水晶に呑み込まれるような感覚を覚える。

足元がふらつき、倒れそうになってしまう。係員さんに支えてもらいどうにか体勢を立て直すが、気分が悪くなってしまった。

「うーん…………」

 彼女は難しい顔でしばし考えたかと思うと優しい笑顔になり、俺の肩を叩いてこう言った。

「平均より少し低いくらいで、最初はみんなこのくらいですよ!」

「あ、はい…………」

 向けられている視線は恐らく同情のもの。いや何、気にすることはない。祝福が測定不可能なチート能力だった、というだけだろう。

「それで、適性のある職業なんですけど……」

 言って、彼女は目を伏せる。もうなんとなく察しているから俺から先に言うか。

「ないんですよね?…………適性のある職業が」

「はい…………」

 自分のせいでもないので申し訳なさそうにしている彼女が気の毒だ。それでも、武器の適性は――

「先ほど気にしてらした武器の適性も、職業の適性から傾向を出すので…………」

 武器の適性もないらしい。まあ、こんなのは想定の範囲内だ。剣士が杖を振っても意味がないように、職業に合った武器があるのは当然で。

だから別に落ち込むことはないのだ。むしろ俺だけに使える武器があるとかそういうフラグかもしれない。

「ま、まあこの分成長性があるってことですから!これからもっと強くなれますよ!」

「ハハ、ありがとうございます……」

 優しさからくる慰めに、俺は苦笑を返すことしかできない。彼女の言う通り、これから活躍することになるのだろう。気まずい雰囲気が二人の間を満たしつつある。

「じゃ、じゃあ俺はこれで――」

 そそくさと部屋を出ようとした矢先、外から爆発音が聞こえてきた。

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