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第二十七話 不安狂騒が夜灯に伏す

 夕食を済ませたら大浴場に行って、汗と腐臭を流す。いつもなら心穏やかな時間でも、なんだか不安で落ち着かない。さっさと上がって家に帰ると、俺は床についた。


 そしておそらく数時間後。眠れない。胸の奥がざわざわして、何か嫌な予感がするような感じ。かなり曖昧な感覚だが、そのせいで眠れないのは確かだ。かと言って、俺にできることは何もない。ただベッドで横になって緩い呼吸をしているだけだ。無理に受付嬢に頼みこんで手伝わせてもらっても、足手まといになるだけだろう。そう、俺はここで眠ることしかできない。


 …………本当に?


 自惚れなのはわかっている。身勝手なのもわかっている。しかし、俺には祝福がある。この世界の魔法によく似た、無力化の能力が。例の惨状の犯人が単独だとすれば、俺は貢献できるはずだ。今のところ、対象となる相手に制限はないわけだし。試すだけでも価値はあるはずだ。俺はできるだけ静かに部屋を出ると、ギルドに向かった。


 が、ギルドは閉まっていた。それはそうだ。営業時間外なのだから。寝る前に見たギルド前の喧騒がまるで嘘だったかのように静まり返っている。考えてみれば普通のことなのだが、先ほどと比べると異様に感じられる。結局、俺にできることはないのか……。


「お前、もしかして出遅れたのか?」


 後ろから急に声をかけられて、俺は飛び上がりそうになる。見ると、そこにはゴツゴツした大男が立っていた。背中には背丈よりも大きな剣を背負っているが、毛ほども重そうにしていない。ザ・剣士って感じの奴だ。それにしても、急に馴れ馴れしく話しかけてくるじゃないか。俺の嫌いなタイプそのままだ。


「ちょうどよかった。俺も準備にちっと時間がかかっちまってよ。行こうぜ」


 俺の返事を聞く前に、そいつは俺をぐいぐい引っ張っていこうとする。寝巻とまではいかないまでも、きちんとした装備もない俺を冒険者と思ったのは正直ヤバいと思う。

でも、これは千載一遇のチャンスだ。上手くいけば事件の解決に一役買えるかもしれない。公算は高いとは言えないが、可能性がないわけではない。


「引っ張るのはやめてくれ!…………場所をど忘れしたから、案内してくれないか?」


 あくまでも最初から知っているフリ。こんなハッタリ、すぐにバレてもおかしくないが――


「おうともよ!さっさと行くぞ!」


 俺の様子はおかまいなし、そいつは俺を片腕で担いだかと思うと駆けだした。嘘だろ!?

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