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第二十六話 受付嬢も忙殺に転ぶ

 夕暮れ。いつもより早く帰ってきたはいいが、特にやることもない。さっきの件はかなり気になるが聞けそうにもない。

意味もなく部屋の中をぐるぐる歩き回ってみる。頭の中と同じようにぐるぐるぐるぐる。まとまらない思考が洗濯機に入れられた服のように

撹拌される。腹の虫もぐるぐるぐるぐる。気づけば陽は落ちていて、街の灯りが夜を照らしている。


 腹ペコだ。普段なら、というか昨日までなら、もう受付嬢が来ていてもおかしくない時間なんだが。あの時深刻そうな表情をしていたから、仕事に追われていて

時間がないのかもしれない。念のため、ギルドまで様子を見に行こう。もし外食したとして、帰ってきてからバスケットが置かれていたら膝から崩れ落ちる。


 そうと決まれば、とギルドに向かう。窓から見えた往来は静かだったのに、ギルドの前には人が忙しそうに行き来していた。読みは当たっていたようだな。

邪魔にならないように人の間を通り抜けて、カウンターへと向かう。そこでは彼女が冒険者達に目まぐるしく指示を出していた。

いつもの、のほほん、というか……のほほ~ん、とした雰囲気はどこへやら、鬼気迫った表情で細かい指示を出している。指示を待つ冒険者は彼女の前に列を為しており、

あまりの早さに大量の冒険者があっという間に処理されていく。そして一息ついた彼女はくるりとこちらを向いた。


「すみませんね、忙しくて。お相手するのに時間がかかりました」


 まさか俺が来たことに最初から気づいていたのか……?凄い処理能力だ。いや、受付嬢をやるならこのくらいできないとダメってことか?


「夕食、今から作るので時間かかっちゃいます。もうちょっと待っていただけますか…………?」


 上目遣いでそう頼んでくる受付嬢。だがさすがに申し訳ない。


「いやいや、今日くらいは外で食べてきますよ!忙しいんだったら――」


「お待ちいただけませんか?」


 上目遣いでお願いされてるはずなのに、なぜか物凄い威圧感を覚える。俺はこういうのに弱い。


「わ、わかりました…………お願いします…………」


 獣に睨まれた小動物よろしく、俺は後退りして距離を取ったあと走って逃げだした。全然そんなことをするつもりはなかったが、本能が勝手に危機を察知して身体を動かした。


 そして十数分後、扉がノックされた。俺が扉を開けると、そこにはバスケットだけが置かれていた。あれで終わりじゃあなくて、まだやることが残っていたのか……。

そんな中で俺の夕食を作らせてしまって申し訳ない。何はともあれ、夕食にしよう。俺はパンを齧る。不味い。生焼けだ。さすがに、キャパオーバーだったんだろうな……。

残すのも勿体ないので、俺はパンを完食した。そもそも、無料で美味しい飯を食べられていた今までがおかしかったんだ。たまには自分が甘えていることを確認しておくべきだろう。


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