第二十一話 自作魔法で転移を為す
『コカトリスの香草焼き』。一体どんな料理が運ばれてくるのかと楽しみにしていたが、なんてことはない。これは鶏の香草焼きだ。
コカトリス。俺の記憶が正しければ、鶏と蛇を組み合わせたような姿の魔物。この世界でも同じような魔物がいるのか。
というか、これはもしかして祝福に含まれている翻訳機能の賜物なのかもしれない。名前から魔物の姿が想像できるのはありがたい。
対策が立てやすいからな。
考えるのは後にして、まずは目の前の香ばしく焼けた肉にかぶりつく。中からじゅわぁと肉汁が溢れ出してきて、舌の上に広がる。
俺の知っているコカトリスは石化能力を持っていて、だから肉も少しばかり石の味がするかもしれないなんて思っていたのだが、全然そんなことはない。
グロウスは自分の勧めた料理に夢中になっている俺の姿を見て、満足そうに微笑んでいる。信じてよかった。自分で選んでいたらこんなに美味しい料理は
食べられていなかったかもしれない。
気付けば全て食べ尽くし、皿の上には何も残っていなかった。自分でも驚くくらいペロリとたいらげた。
「お気に召したようで何よりだよ。ここの料理、美味しいでしょ?」
「かなり美味しいですね…………」
感動でちょっと上の空な返事をしてしまう。本当に、美味しかった……。
「それじゃあちょうどいい時間だし、そろそろ解散しよっか」
伝票を掴みながら、グロウスは立ち上がる。ご馳走になります。
「今日はありがとう、楽しかったよ」
支払いを済ませながらそんなことも言う。礼を言うべきはこちらだ。
「こちらこそありがとうございました!助かります!」
俺は紙袋を落とさないように気を付けながらお辞儀して、店を出る。後は家に帰るだけだ。
「そうだ!最近作った面白い魔法を見せてあげよう!荷物を貸してくれるかい?」
俺は首をかしげつつ、持っている紙袋を全てグロウスに渡す。
「空間を統べる。空間を滑る。揺るぐ座標に釘を刺す」
グロウスがそう唱えると、手元に魔法陣が展開される。魔法陣は数秒回転したかと思うと、俺の荷物と共に消えた。
「えっ!?」
驚きのあまり素っ頓狂な声を出す俺。それに対しグロウスは爽やかな笑顔で続ける。
「転移魔法ってヤツさ。普通は人間を対象にしているから必要な魔力も多いし詠唱も複雑なんだけど、これは物を対象に、しかも転送距離を制限しているから
気軽に使えるんだ」
「す、すげえ…………」
「今ので君の家に荷物を送ったから、帰って確認してみるといい。失敗してたら……後で弁償するから言ってくれ」
苦笑交じりにそう話すグロウス。びっくりするから事前に言って欲しかったとは思う。
「この魔法があれば荷物を持ち歩く必要がなくて便利だろう?まあ作りたてでまだ安定してないんだけどね。発動に失敗したことはあっても、
転送に失敗したことはないから安心して」
「魔法って自作できるんですね!」
「魔法の構造さえ理解できれば難しいことでもないよ?多分君もそのうちできるようになる。じゃあね、新米君!」
グロウスはウインクをすると、踵を返して去っていった。振り向きつつ、片手も挙げて。俺もグロウスの姿が見えなくなるまで手を振り返す。
さて、家に帰ろうか。
来た道を記憶を頼りに引き返す。道案内がそこかしこにあるおかげで、大して苦労せずに俺は自宅についた。
ドアを開けてみると、そこには確かに俺の荷物が置かれている。魔法って便利だな…………。俺にその才能はないかもしれないが、
どうにか極めてみたいものだ。
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