第二話 初期地点で自然を想う
見渡す限りの緑。こんな広大な自然に触れたのはいつぶりだろうか。そんなことを考えながら、俺はどこまでも青い空を眺めていた。
そよ風が心地良い。異世界に転生してきた俺の最初の感想。お日様はあったかいし、土はほどよく柔らかいから、思わず眠くなってしまう。
このまま寝てしまおうか。否、そんなことをしたらこの夢が覚めてしまうかもしれない。こんな俺に都合のいい異世界転生はどうせ夢に過ぎず、
起きたらまた無限の連勤が待っているに決まっている。それなら楽しめるうちに楽しんだほうが得だ。俺は眠気を振り払い起き上がる。
さて、転生する時に祝福とかいうのを貰ったわけだが。説明を聞くのが面倒でどんな能力なのかわかっていない。どうせ攻撃力SSSとか、
魔力無限とか、わかりやすいチート能力を授かっているだろう。とりあえず今の自分の強さを知りたいと思い、手で空を切ってみる。
当然ながらステータス画面は現れない。
「こういうのは、ギルドとか行ってからか…………?」
無双剣士になるのか、最強魔術師になるのか、少し外して凄腕商人とか?自分の中でも方針がまだ決まってないのかもしれない。
とにもかくにも移動だ、と俺は周りを見渡す。どこまでも広がる緑。道らしきものもない。つまり、方向がわからない。
もしかしてここで旅は終わりなのか……?これが俺の想像力の限界?後はひたすら大自然を満喫して、飽きた頃に起きるだけ?
そんなのってないぜ、と空を仰いだ俺の目に入ってきたのは――悠々と空を泳ぐドラゴンだった。あんな風に空を飛べたらきっと楽しいだろうなあ。
ドラゴンはゆっくりと旋回して、どういうわけか俺の近くに着陸した。バスくらいの大きさのそのドラゴンは、上に人間を乗せている。
「やあやあ、君どうしたのー?迷子?」
いかにも騎士と言わんばかりの恰好をしたそいつは馴れ馴れしく話しかけてくる。こういう時、見覚えのある顔が出てくるものだと思っていたが。
「気付いたら平原にいて…………」
「そっか!街まで送ってあげようか?」
俺が言い終わる前に、思った通りの提案をしてくれる。ご都合主義も悪くない。ここはありがたく相乗りさせてもらうことにしよう。
「お願いします」
「おっけー!じゃあこの子の背中に乗ってよ」
そいつは少し前に寄り、ドラゴンの背中をバシバシ叩く。ドラゴンはそんな主人を呆れて見ているが、どうやら俺が乗ることを嫌がってはないようだ。
手を貸してもらいながら、どうにか上に乗る。鞍についている取っ手をしっかりと掴むと、ドラゴンが勢いよく飛び立った。
風が上から一気に押しつけてくる。しかしすぐにそれは止み、代わりに少し冷たい空気が体を包む。俺は今――空を飛んでいる。
翼で空を切る音、遥か下に見える地面、うっすら感じる息苦しさ。非日常。自分の鼓動をはっきりと感じる。これが、空を飛ぶということか。
そうしているうちにいつの間にか街の上空に着いていたようで、ドラゴンはゆっくりと下降する。だんだんと地面が迫ってくる。着陸した瞬間、体に
衝撃が伝わってくるような気がする。そうして、俺は初めての街に辿り着いた。
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