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第十九話 観察眼は親切に開く

 見たことのない料理名がずらりと並んでいる。特に目を惹くのは、魔物らしき名前も載っているところだ。

元の世界と同じ食材なんて存在しないと思っていたから覚悟こそしていたが、まさか魔物を食べることに

なるとは。

 ゲテモノだったら嫌なので、冒険はせずに直感で選ぶとしよう。例えばこの「ケルパの内臓煮」なんかは

怖い。「モイアノの目玉焼き」…………嫌な感じがするな。「アルラウネのサラダ」もある。もしかして俺が

依頼で採取してきた葉は、こんなところで使われているのだろうか。

「悩んでるねぇ……あ、もしかしてどんな料理かわからないとか?」

 その通りである。メニュー表には写真がないから、名前から推測するしかない。

「もし良かったらオススメがあるんだけど」

「じゃあそれで」

 即決。悩む理由など何もない。グロウスのおすすめなら、口に合わないことはあってもゲテモノはないはずだ。

「わかった。すいませーん!コカトリスの香草焼きを二つー!」

「かしこまりましたぁーっ!」

 グロウスが大声で注文すると、厨房から返事が飛んできた。今の時間帯は人が少ないらしいし、ウエイトレスはいないのかもしれない。


「ここの料理はどれも美味しいからね、気に入ってもらえると思うよ」

 笑顔でそんなことを言うグロウス。最早注文は済んでいるのだから、どちらにせよ信用するしかないのだが。

「ところで、何か聞きたいことがあるんじゃないかい?」

 その通り。俺はこの世界のことを何も知らない。

「そうですね、まずは魔法について聞きたいんですけど……」

「魔法について、か……。この世界じゃ、子どもでも知っていることだけどね」

 『この世界では』?まさか、グロウスは…………

「これはあくまでも勘でしかないから外れていたら申し訳ないんだが…………君、もしかして異世界から来てないかい?」

「ッ!!」

 やはり気づいていた。今更隠し通せるわけもなく、俺は息をのんで驚きを露わにする。

「やっぱりね……なんとなくそんな気がしていたんだよ。どんなに無謀な冒険者でも、着の身着のままで飛び出しはしないと思うし」

 それはどうだろうか。この世界にも後先顧みない無鉄砲な人間はいるんじゃないか?

「それに、全身にアルラウネを纏ったまま街に帰ろうとはしない」

 ニヤリと笑って、こちらを見る。それは俺もそう思う。無謀とか無鉄砲とか、そういう次元を超えている。

「実は異世界から来た人に会うの、君が初めてじゃないんだよね」

「!?!?!?」

 思わず目を丸くする。ギルドに新人冒険者向けのサービスを作ったらしいハヤト・クロイワとやらも俺と同じ世界から来た人間だろうし、

もしかして異世界転生者って珍しい存在でもないのか?


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