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第十八話 先輩風が常に吹く

 善人だから金も集まるのか、金があるから性格もいいのか。ニワトリが先かタマゴが先か、みたいな問題だ。どちらにしろしょうもない。

俺は性格も良くないし、金もないから考えるだけ無駄だ。そのどちらかを手に入れたとしても、グロウスのようになれるとは思えない。

 俺達は服がいっぱいに詰められた紙袋をいくつか抱えながら店を出る。まだ陽が落ちるには遠く、なんなら普通に昼前だ。

この世界に来てから初めての休日だから、日中で賑わっている街並みが少しだけ新鮮だ。ちょっとした非日常を感じる。まるで風邪をひいた日に、熱が下がったから外出した時のような。

 そして、俺はこの世界が俺の日常の一部になっていることに気がつく。まだ来てから数日しか経っていないのに、もうここが自分の居場所だと思っている。

思えば、元の世界では会社にさえ居場所はなかったような気がする。従業員の数だけのデスクもないから自分の荷物は常に自分で運び、いつでも移動できるようにする。

休んでいたり、あるいは倒れた人の空いた席に座り、淡々と作業を進める。そんな日々。

 だがしかし、今はもう帰る場所もあるし、気軽に話せる相手もいる。以前からは考えられないほどの厚遇だ。しかも縁にも恵まれて、こんなポンコツの面倒を見てくれる

受付嬢や、無限に甘やかしてくる先輩冒険者もいる。最高じゃないか。

「ちょっと疲れちゃったかな?どこかで休もうか」

 幸せをかみしめている俺を疲れていると勘違いしたのか、グロウスがそう声をかけてくる。まあ、せっかくだしどこかで座りながら話したいとは思う。

ひとまず、この荷物を置いてから。

「そうですね、色々話も聞きたいんで……一旦荷物を置いてきてからでもいいですか?」

「すぐ近くにある酒場で休まないかい?荷物なら僕が持つし」

 そう言いながら、グロウスは俺の抱えていた紙袋を半分以上持っていく。俺よりも細そうに見えるが、意外と筋力があるのだろうか。

「ほら、行こうじゃないか!今日は全部僕の奢りだよ!」

 眩しい笑顔を向けられて、俺は逆らうことができずについていく。いつかこの恩は必ず返さねばなるまい。


 すぐ近くというのは誇張なしの表現だったようで、店を出てから一分もしないうちに酒場にたどり着いた。これなら確かに帰らなくて良かったかもしれない。

扉を開けて中に入ると、あまり人はおらず閑散としていた。もしかして穴場スポットだったりするのか?

「今の時間帯は大体の冒険者が外に出てるからね。本領を発揮するのは夜になってからだよ」

 どれだけ気遣いを極めたら人の心が読めるようになるのか。それとも俺の考えていることが顔に出やすいだけか。もしくはどっちもか?

何にしろ、落ち着いて話せるのは良かった。あまり騒がしいのは得意じゃないからな。

 俺達は四人席を選んで、向き合うようにして座る。隣に置く荷物の量が段違いだ。もちろん、こちらの方が少ない。

「さて、少し早いけど昼食にしようか。先に選んでいいよ」

 グロウスはそう言いつつ、俺にメニューを渡してくれた。さて、何にしようか……。

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