第十七話 衣服購入と貨幣を知る
俺はこれまでの人生において、お洒落に気を遣ったことなど一度もなかった。服はパッと見の着易さだけで選び、サイズを軽く確認しただけで購入することがほとんど。
だから俺には服を選べない。いや、選べなくはないが、この「先輩冒険者に奢ってもらう」という文脈において、何を買うべきかの正解がわからない。
グロウスは相も変わらず爽やかな笑顔でこちらの様子をうかがっている。多分、何を買っても笑顔で受け入れるだろう。この店の服を全て買えるくらいの財力はあると言っていたし、
どんな服でも買えないことはないだろう。
とりあえず、俺は隅の方に陳列されているパーカーに目をつけた。俺の私服の際たるものだ。ついでにTシャツも探してみるが、さすがに置いていない。
それはまあ、異世界だからしょうがない。むしろカットシャツがあるだけでも驚きだし。紺色に無地のパーカーを二つくらい手に取る。そういえば、何着買おうか決めていない。
どうせグロウスに聞いたら
「好きなだけ買えばいいよ。ここは奢りなんだから!」
なんてことを言うに違いない。無限に甘やかされている。
ひとまず当分生きていくのに困らない程度の服を買わせてもらうとしようか。ちょっと多めに三、四着もあれば、ローテーションで着回していけるだろう。
俺には洗濯も魔法による浄化もできないから、結局そこは頼られないといけないかもしれないけど。
パーカーを片手に、次はシャツとパンツを見る。あまりラフなものはないが、普段着にするならこれでも困らないだろう。
これも適当に数着手に取って、続けざまに下着も取る。まあこんなもんか?
怖いのはサイズが書いていないため、勘で買うしかないところ。試着室もないから、着て確認することもできない。鏡を見て、大体のサイズで合わせるしかない。
自分の懐こそ痛まないが、ここでサイズが合わないものを買ってしまうと申し訳が立たない。とはいえどうしようもないので、俺はグロウスに目で合図する。
「おや、それだけでいいのかい?思ったより少ないね」
「とりあえず必要な分はこれで足りるんで……」
俺は抱えた服で前方の視界がまあまあ悪くなるくらいには服を選んだつもりなのだが、それでも予想よりは少なかったらしい。
どれだけ買うと思われていたのだろうか。
「じゃあこれでお会計お願いします」
「はい!」
服の山をぼふんと置く。これ、店員も値段を計算するの大変じゃないだろうか?
「こちら2000ゴルドになります!」
一瞬だった。というか、この世界の貨幣の単位を初めて聞いた。依頼を受けるとき、報酬は聞かないでやってたからな……。
それは別に面倒だからというわけではなく、報酬の額に関係なく俺は依頼をこなすつもりだったからだ。どうせ関係ないのなら、聞く必要はない――
結果として、面倒だからだったかもしれない。
「はいよ~」
グロウスは重そうな財布を取り出すと、白銀貨を1枚差し出した。
「8000ゴルドのお返しです!」
なるほど、白銀貨は1枚10000ゴルドなのか。その白銀貨が財布に大量に入っていたグロウスは、一体何者なのだろうか……?
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