第十六話 服飾文化も相当に似る
今日の朝食はパンとサラダだった。というか、パンにサラダが挟まっていた。健康面を意識してくれているのかもしれないが、BLTサンドの肉抜きはちょっと嫌だ……。
そう思いつつ齧ってみると、意外に美味しい。瑞々しい野菜の味が口の中に広がる。思ったよりも野菜がジューシーで肉厚だから、満足感も高い。
俺は人が待っているのも忘れて朝食を堪能した。
そして十数分後。美味しく食べ終わった俺は、財布かわりのポーチを片手にギルドに向かった。他に準備できることもないしな。
ギルドはそこそこ賑わっており、多種多様な冒険者たちでごった返している。この中からグロウスを探すのは苦労しそうだ。できる限り背伸びして、
目を皿にして見渡す。
「やあ!結構早かったね!」
「うおっ!?」
後ろから声をかけてきた。つま先立ちをしていたところに驚いたせいで、思わず倒れそうになってしまう。
「うわわ、ごめんね!」
それをしっかり受け止めるグロウス。謝るなら最初から驚かせないでほしい。
「それじゃ、行こうか」
「はい……」
苦笑いでギルドを出る俺とグロウス。先が思いやられるな…………。
服屋は思ったよりもギルドから遠く、ともすれば数日前に行った森と同じくらい時間がかかった。まあ、談笑しながら歩いていたせいもあるだろうが。
何はともあれ、俺たちは無事に服を買いに来れたというわけだ。問題はここから。
忘れてはいけないが、ここは異世界。中世風の様子から見るに、俺の知る服の類はかなり少ないはずだ。昨日貸してもらったシャツとズボンはたまたま
元いた世界とほとんど同じものだったが、そればっかりがあるわけではないだろう。それに、知っている服があったからと言ってそればかりを買うのもよくない。
一応俺も冒険者の端くれになったわけだし、相応に動きやすさとか、防御力などを加味した買い物をするべきだろう。
そんな心配をしていたのは服屋に入る直前まで。店内の様子を見た俺は仰天した。何故なら、商品のおよそ半分が俺が見たことも着たこともある種類の服だったからだ。
もう半分は俺が予想していた通り、この世界によく馴染むというか、イメージ通りの服が並んでいた。
とりあえず、見たことのない服から調べてみることにする。この世界のシステムはよくわからないが、着けているだけで魔力が上がる服などもあるのだろうか。
だとしたら是非買っておきたい。まだまともに使える魔法もない身だが、いつ才能が開花してもおかしくないからな。特に、俺の祝福による能力だと思っていたものが
単なる中級魔法である可能性がある今のうちは、あらゆる可能性に予防線を張っておきたい。とはいえ魔法の基礎なんて知らない俺に魔法が使えたということは、
祝福による効果だと考えるのが適当であって、そうなると魔法に関連する祝福だと推測できる。よって、魔力に投資するのは間違いではないだろう。
ここまで長々と思考してきたが、結局のところ俺が魔力を強化する服を身に着けたい理由は単純明快だ。なんかかっこいいから。どうせ自分の金だし、住居も食事も
甘えさせてもらっている身だ。あまり無茶はできないが、多少の散財はいいだろう。
「ん?何か探しているのかな?」
熱心に服を選別している俺に、グロウスが話しかけてくる。そうだ、聞けば早いじゃないか。
「なんかこう……着ただけで強くなれる服ってありませんかね?」
グロウスは苦笑する。
「そうだねえ……そんなものがあれば便利なんだけどね」
拍子抜けだ。もしかしてそんなものは異世界にもなくて、完全にゲームやマンガのファンタジーにだけあるものだったのか。ちょっと残念だな。
「まあ、好きに選びなよ。ここは僕の奢りなわけだしね」
「はい。…………え?」
一拍置いて振り向く。奢りだと?さすがにそこまでお世話になるわけにはいかないだろう。そんなことをしてもらう筋合いはない。
「安心してよ、ここにある服全部買っても大丈夫なくらいの資金はあるんだから。まあ、そんなことをしたら生活が苦しくなっちゃうけど……」
グロウスは続けてフォローしてくる。そういうわけではないのだ。
「いやでも、俺……自分で買いますよ?」
「何言ってんの、新人冒険者は装備にお金を使わなきゃ!いいからいいから、気にしないで」
そんなことを言われても気にしないわけがない。今まで目にも留めていなかった値札が存在感を放ってくる。
というか、今ここにおいて、俺は何を基準に服を選んだらいいんだ?
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