第十五話 福利厚生も当然に整う
布団の中で大きく伸びをして、勢いよく起き上がる。新しい朝だ。窓から差し込む朝陽が健康的な起床を促してくれる。
そして扉を叩くノックの音は、朝食を持ってきてくれた受付嬢だろう。俺は軽い足取りで扉を開けに行く。
「はーい!」
ガチャリ。
「おはよう!よく眠れたかな?」
扉の向こうにいたのは爽やか男だった。何故ここに?
「おはようございます~、朝食をお持ちしましたよ~」
隣には受付嬢もいた。案の定、朝食の入ったバスケットを持っている。
「な、何故ここに…………?」
「昨日、汚れた服をそのまま持って帰っちゃってたろ?僕なら浄化魔法ですぐに綺麗にできるから、貸してくれる?」
「グロウスさんが探してたみたいなので、朝食ついでにお連れしたんですよ~」
俺は困惑しつつも、机の上に置きっぱなしだったジャージを爽やか男――グロウスに渡す。
グロウスがジャージを持って二言三言呟くと、あっという間に綺麗になった。魔法の力って、凄え…………!
「はい、これでよし。他にもあったら浄化するよ?」
「いや、本当に持ってる服これだけなんで…………」
「えっ?一着しかないの?」
思いっきり困惑されている。それもそうだ。どれだけ服装に興味がない人間でも、毎日着るのに困らないくらいの服は持っていないとおかしい。
でも、こちとら異世界転生者なのだ。文句をつけるなら家のクローゼットごと俺を連れてこなかった女神に言ってほしい。まあ、家のクローゼットにも
全然服は入っていないが。
「ちょっと事情がありまして…………」
正直に話すわけにもいかないので、適当に濁す。異世界から着の身着のままで来たなんて言っても、変人扱いされるだけで終わるに決まってる。
いや、こいつなら信じずとも表面上は同情してくれそうだな。やってみてやろうか。
「そうか……今日時間あるかな?良かったら服屋で何着か買わないか?」
俺は反射的に受付嬢に視線を向ける。今日も依頼をこなさねばならない。
「今日、お休みします~?」
「えっ!?」
まさかの提案に、俺の目は丸くなる。そんなことが許されていいのか?
「今日はやっていただける依頼がなさそうなので、やってもらうにしてもちょっと厳しくなっちゃうんですよ~」
「なので、お休みしちゃいましょう~!」
まさかのありがたい提案。俺の勤めていた会社に休日なんて概念はなかったのに。仕事を大量にこなして、できる仕事がなくなった一瞬の隙をついて家に戻って寝る。
そんな日々だった。それが今はどうだ。驚くほど健康的な生活を送っているではないか。
「ありがとうございます!」
俺はまず受付嬢に礼を言い、
「ぜひ、行きましょう!」
グロウスの方を向いてそう言った。
「ごぎゅるうるるるうるるる」
よし行くぞ、とばかりに腹の虫も追随する。
「ハハ、まずは朝食からだね。ギルドの方で待っておくから、準備ができたら来てくれ」
「じゃあこれ、今日の朝食です~」
受付嬢は俺にバスケットを渡しながら、昨日の分のバスケットを回収する。
「では、ごゆっくり~」
「また後でね」
二人揃って退室する。よし、早く完食して、服を買いに行こうじゃないか。いつまでも服を借りているわけにはいかないし。
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