第十二話 植物魔物は意外と臭う
「<バインド>って……そういう魔法があるんですか?」
思わず俺は訊き返す。一度理解したはずの自分の能力が、誰にでも使える魔法だとしたら最悪だ。
「知らないのに使えたのか!君、もしかして才能があるんじゃないか?」
こう褒められると悪い気はしない。元々思い描いていたのもこういうシーンだしな。
もしかすると俺の祝福は、魔法を好きなように扱える能力だったとか?前回オークと対峙したときに
発動したのがたまたまこの<バインド>だったってだけで、実は他の魔法も使えるとか?
あまり信じられない。そもそも、俺はあの時魔法を使おうとも思ってなかったんだから。
「ハハ、そうですかね……?何はともあれ、ありがとうございました」
苦笑でお茶を濁すことしかできない。結局、俺は俺の能力がわからないままなのか?
こうなると、今さら女神の話をきちんと聞かなかったことが悔やまれる。入社したのがドのつくブラック企業だとわかった時と同じ気分だ。俺は面倒事をことごとく嫌い、しかしそのせいで更なる面倒に陥るのだ。
「次からは気を付けるんだよ、新米くん!応援してるよ!」
そいつはまたしても爽やかに、なんなら少し眩しいくらいの笑顔で俺を見送ってくれる。
とにかく、今はギルドに戻ること。それが先決だ。
ギルドに着いて受付嬢にアルラウネの葉を渡すと、途端にどっと疲れが押し寄せてきた。それなりに長い
時間、アルラウネを斬っていたせいだろう。あと、街まで全身にアルラウネをくっつけていたのもあるか。
何はともあれ、と俺は今日の報酬を受け取って自宅に戻る。ため息混じりに装備などを外す。
そして思う。風呂に入りたい、と。この異世界に風呂の文化があるのかどうかをそもそも知らないが、
そろそろ汗を流さないと体臭が酷いことになる。ただでさえ魔物の唾液が全身に付着しているのだ。
爪弾き者にはなったとしても、鼻つまみ者にはなりたくない。これもまた、ギルドのサービスにあれば
いいのだが……。
コンコン。ドアがノックされる。軽く返事をして開けると、そこにはまたしてもバスケットを持った
受付嬢が。
「ああ、お疲れ様です……」
「夕食お持ちしました~!……浮かない顔ですね?」
バスケットから微かに香る美味しそうな匂いに腹は鳴るものの、先に風呂に入りたい。
さて、どう伝えたものか――悩む俺に、受付嬢が言う。
「そうだ、先に大浴場で疲れを流していったらいかがですか?討伐で結構動きまわったでしょうし」
「大浴場があるんですか?!」
願ってもない展開。夢を疑いたくなるご都合主義。なんだっていい。今、風呂に入れるなら――!
「少し離れたところに銭湯があるんです。さすがにサービス外なので、冒険者さんの自腹になりますけども」
「どこ、ですか」
自腹でも構わない。これ以上サービスを要求する気はない。とにかく早く風呂に入りたい。
「ここを出て右側に進んで、道なりに行ったら看板が見えると思います~」
「ありがとうございますッ!」
俺は聞くなりこれまでの報酬を入れたポーチを掴み、大浴場へと駆け出した。
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