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第十一話 親切善人は顔声も善く

 じゃあもう八方塞がりだ。俺が他に魔法でも使えたら話は違ったかもしれないが、生憎この世界に来てから

何かを学んだことはない。いや、使えるのか?この世界における魔法がどんなものかは知らないが、祝福で

貰った能力もあんな雑に発動できたわけだし、もしかするとそれっぽい詠唱をすれば使えるかもしれない。

何事も挑戦だ。

「えー……燃えよ炎っ!ブレイジング!」

 さっきよりもちょっと大きめの声で言う。しかし何も起こらない。まあ、わかりきっていたことだ。

アルラウネはお構いなしに纏わりついてくる。斬るのが追いつかない……!

こうなったら、と俺は剣を振りながらボソッと呟く。

「拘束せよ、影の鎖!拘束せよ、影の鎖!……」

 多重に展開される魔法陣。あちらが物量ならこちらも物量、数撃てば多少の隙も作れるはずだ。

影の鎖は互いに干渉することなくそれぞれが別のアルラウネに絡みつき、予想通り無力化されたアルラウネたちがなお俺の身体にかじりついている。これでよし。もはやかじりつく場所も空いていないし、かじりついているアルラウネは全部無力化した。見た目は最悪だが、これで帰ることはできるだろう。俺は半分ほど覆われた視界を頼りに、ぴょんぴょん跳ねて邪魔なアルラウネを斬りながら帰途についた。


「君、大丈夫かい……?」

 街の入口で、声をかけられる。アルラウネが顔にしがみついているため前は見えないが、多分敵意はないだろう。純粋に心配してくれていそうだ。それもそうか。全身に魔物を纏っているのだ。しかも恐らく背後から何匹かついてきている。疑り深い人なら魔物を連れてきて悪事を働こうとしていると思うだろう。親切な人でよかった。

「痛くはないんですけど、邪魔ですね。取れたらいいんですけど……」

 自分ではどうしようもない段階まで来ている。腕が重すぎて剣が振れない。勢いをつければどうにか斬れるかもしれないが、それでは自分ごと斬ってしまいそうだ。

「アハハ、一匹ずつ剥がしてあげるよ。ちょっと動かないで」

 そいつはそう言うと、アルラウネを丁寧に仕留めて俺の身体からアルラウネを落としてくれた。

最後に背中の一匹も斬ってもらい、俺は礼を言う。

「ありがとう、助かったよ」

「どういたしまして。びっくりしたよ、何をしてたの……?」

「いやー、ちょっとアルラウネと戦ってて、纏わりつかれちゃって…………」

「そんなレベルじゃなかったよ!?まさかあんな数に長時間噛みつかれてたのかい!?」

「まあ鬱陶しいだけで痛くはないんで…………」

 俺がそう言うと、そいつはそんな馬鹿な、という顔で俺の身体を見た。実際、俺の身体には浅い傷しか残っていない。無力化したからな。

「ほ、本当だ……全然傷がついてない。君、もしかして何か魔法で体を守ってたりした?」

 怪訝そうな顔で尋ねてくる。まあ、そんなことができる奴ならそもそもアルラウネを倒しているはず、という疑念を抱くのは当然だ。

「いや、根を潰すことができないんで、こいつらを無力化して逃げてきたんです…………」

 ちょっと目を伏せつつ言う。依頼ということを知らなければ、単に調子に乗って魔物に手を出して酷い目に遭ったマヌケだ。

「無力化?すごいね、もう<バインド>を使えるのか…………!」

 そんな俺の心配もむなしく、そいつは爽やかな笑顔で俺のことを褒めてくれる。よくよく見たら顔面偏差値も高めだし、声も穏やかで聞き取りやすい。

要するに……モテそう。いや、そんなことより。

「<バインド>はたしか中級魔術だろう?君は見た感じ新人冒険者なのに凄いじゃないか!」

 中級魔法?俺の祝福だと思っていたものが?

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